慢性腎不全患者の透析療法選択時の支援

<はじめに>透析導入を余儀なくされた患者は, 病気の予後や透析への未知なる不安, 社会的役割の変化等, 様々な不安を抱え透析を受容していく. そのため患者が透析を受容できるよう, 透析療法選択時{血液透析(HD)・腹膜透析(PD)}の指導を行なわなければならない. 今回透析療法を行なっている患者から, 腹膜炎の辛さ・怖さ・シャント穿刺時の痛みなどの様々な声がきかれたので, 選択時十分な指導がおこなえていたかアンケート調査を実施した. その結果, 透析療法を理解して選択した患者に於いても, 導入後の予期せぬトラブルが発生した場合や, 尿毒症期に説明されよく覚えていないなど, 不満があ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 582
Main Authors 児玉知子, 瀧澤佳子, 草間由香里, 板倉紀子, 高野かよ子, 菊地幸代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
Online AccessGet full text
ISSN0468-2513

Cover

More Information
Summary:<はじめに>透析導入を余儀なくされた患者は, 病気の予後や透析への未知なる不安, 社会的役割の変化等, 様々な不安を抱え透析を受容していく. そのため患者が透析を受容できるよう, 透析療法選択時{血液透析(HD)・腹膜透析(PD)}の指導を行なわなければならない. 今回透析療法を行なっている患者から, 腹膜炎の辛さ・怖さ・シャント穿刺時の痛みなどの様々な声がきかれたので, 選択時十分な指導がおこなえていたかアンケート調査を実施した. その結果, 透析療法を理解して選択した患者に於いても, 導入後の予期せぬトラブルが発生した場合や, 尿毒症期に説明されよく覚えていないなど, 不満があることが明らかになった. そこで, 選択時の指導内容を見直し, パンフレットの改正を行なったので報告する. <期間>平成17年1月から4月 <対象>平成16年新規透析導入患者83名中50名(HD・32名, 当院PD外来通院患者18名) <方法>1)透析療法選択時の状況に関するアンケート調査を実施し, 内容を分析する. 2)透析療法選択時のパンフレットを改正する. <結果・考察>アンケート調査の結果は, 1)<透析療法を勧められた時期>は, 尿毒症期84%, 導入期12%, 保存期4%と, 多くの患者が何らかの症状が出てから説明をうけていた. 選択時の説明が尿毒症期であることは, 患者の身体面や精神面でも苦痛を伴うものであり, 説明を十分に理解し納得して選択するには不十分と考えられる. 今後は, 身体症状を伴わない保存期が望ましく, 早期に透析療法についての情報提供を行なえるよう, 医師と連携を図っていく必要がある. 2)<選択時の説明は十分であったか>は, はい78%, いいえ22%で, 尿毒症状による体調不良や高齢者の特徴である認知力の低下などがあり, 説明が解りにくかったと答えている. そのため, 患者の体調, 患者・家族のニードにそった十分な説明と個別性のある指導を提供し理解を得ることが重要である. 3)<選択時の不安>は, ある84%, ない16%であった. 不安があるの内訳は, HDでは24%で, 一生続けなくてはいけない事, 透析中・透析後の不均衡症候群や血圧の変動などであった. PDでは, 76%と圧倒的に不安材料が多く, PDの手技や機械操作について1人でできるのか, 続けていけるのか, トラブル時, 対処できるのか等などであった. このことからも, PDは在宅療法であり全て自己管理が必要なため, 患者は不安を抱えやすい事がわかった. そのため, 選択時の指導を十分に行ない, 緊急時の体制や統一した指導が行なえるよう, 体制を整え安心していただくことが重要だと考える. 4)<パンフレットの内容>は, 理解できた69%, やや理解できた23%, 理解できない8%であった. 理解できない理由は, 内容が難しく, 特に高齢者では理解しにくいなどがほとんどであった. パンフレット内容で事前に知っておきたかった事については, ない72%, ある28%であった. その内訳は, HDでは透析中の同一体位, 穿刺時の痛み, 透析中の排泄などで, PDでは腹膜炎の痛みの程度や排液不良, 旅行に行けること, 機械の故障や音についてなどであった. そのため, このような内容をふまえたパンフレットの改正を行なった. <まとめ>1)慢性腎不全で透析療法を余儀なくされた患者の問題点が明確になった. 2)透析療法選択時に必要なパンフレットの改正が示唆された.
ISSN:0468-2513