輸血後ウイルス肝炎の現状1994-1995

目的:きわめて低くなったわが国の輸血後肝炎の正確な発症率を把握するには, 多くの症例収集が必須である. そこで, 日本赤十字社では特定研究班を組織し, 輸血後B型およびC型肝炎の発生状況の全国的調査を行った. また, 輸血後肝炎発症の背景を知るため, 献血年齢層における肝炎ウイルス等の感染状態の解析を試みた. 方法:輸血後肝炎発症率の調査はprospectiveに行った. 患者血清は, 少なくとも輸血前と退院時に採血し, 凍結保存しておく. 輸血後はできる限り定期的に, 少なくとも3ヵ月, 可能な限り6ヵ月まで追跡した. 輸血後肝炎の診断は厚生省肝炎研究連絡協議会の診断基準に従った. 肝炎ウイ...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 201
Main Authors 松田利夫, 仲田健一, 高橋有二, 霜山龍志, 飯塚久雄, 野尻徳行, 金光公浩, 鈴木典子, 神谷忠, 青山憲一, 山野孟, 宮原正行, 水井正明, 清川博之, 大林明, 清沢研道, 清水勝, 真弓忠, 吉澤浩司, 西岡久壽彌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:目的:きわめて低くなったわが国の輸血後肝炎の正確な発症率を把握するには, 多くの症例収集が必須である. そこで, 日本赤十字社では特定研究班を組織し, 輸血後B型およびC型肝炎の発生状況の全国的調査を行った. また, 輸血後肝炎発症の背景を知るため, 献血年齢層における肝炎ウイルス等の感染状態の解析を試みた. 方法:輸血後肝炎発症率の調査はprospectiveに行った. 患者血清は, 少なくとも輸血前と退院時に採血し, 凍結保存しておく. 輸血後はできる限り定期的に, 少なくとも3ヵ月, 可能な限り6ヵ月まで追跡した. 輸血後肝炎の診断は厚生省肝炎研究連絡協議会の診断基準に従った. 肝炎ウイルス等の感染状況調査は1995年4月1日から1996年3月31日の新規献血者のHBs抗原, HCV抗体, HTLV-I抗体, 梅毒(RPR法陽性者)の検査結果を集計し, 得られた陽性率を自治省発表男女別・年齢別推定人口(1994年10月1日現在)に掛け, 陽性者数を推定した. 結果と考察:1994-1995年の間に全国55カ所の病院で, 10345名の受血者を追跡し, 6458症例の追跡が完了した. B型輸血後肝炎1症例, C型輸血後肝炎4症例の報告があった. これらの輸血に使われた血液の献血者は現在追跡中であるが, 追跡ができた献血者からは肝炎ウイルス関連マーカーは確認できておらず, 輸血によるものとは断定できなかったので, 今回はこれらの症例は疑診と判定した. その他, 輸血後肝炎診断基準の確診例にあたるものが31症例認められたが, これらはすべてALT値のみが変化する非B非C型であった. 日本国内の献血年齢者層におけるHBs抗原陽性者は0.93%, おおよそ79万人, HCV抗体陽性者は1.30%, 111万人, HTLV-1抗体陽性者は0.89%, 76万人, 梅毒(RPR法陽性者)は0.43%, 36万人, と推定された.
ISSN:0546-1448