(3)悪性神経膠腫におけるNotch signalingの役割について
glioblastomaは, 現在最も効果のある化学療法として発表されているものでもmedian survivalが18ヵ月と極端に悪い. しかし, 脳実質に発生するためQOLの立場から考えればradical surgeryは, 避けるべきであり摘出は常に不十分である. 相対的に化学療法が期待されるがまだ満足できる成績は得られておらず, さらなる基礎的な知識の蓄積がもとめられている. 今回注目したNotch蛋白はもともと個体発生時の細胞分化においてkeyとなる蛋白として知られていたが, 各種悪性腫瘍においても過剰発現していることがわかり, その役割が注目されるようになっている. われわれはすで...
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Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 71; no. 6; p. 459 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
15.11.2004
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-4676 |
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Summary: | glioblastomaは, 現在最も効果のある化学療法として発表されているものでもmedian survivalが18ヵ月と極端に悪い. しかし, 脳実質に発生するためQOLの立場から考えればradical surgeryは, 避けるべきであり摘出は常に不十分である. 相対的に化学療法が期待されるがまだ満足できる成績は得られておらず, さらなる基礎的な知識の蓄積がもとめられている. 今回注目したNotch蛋白はもともと個体発生時の細胞分化においてkeyとなる蛋白として知られていたが, 各種悪性腫瘍においても過剰発現していることがわかり, その役割が注目されるようになっている. われわれはすでに神経膠腫でこの蛋白の発現をみており, その役割を調べていくことでこの腫瘍の治療の手がかりが得られるのではと期待している. 発生学で明らかとなっているシグナルの流れと対比させながら脳腫瘍のおけるこのシグナル固有の性格について考える. Notch蛋白はヒトで4つのサブタイプがあるが, 今回はNotch1, 2について調べた. glioblastomaでは, 両方とも発現しておりNotch2のほうが優位である. 活性化型のtruncated type(120kD)が強くみとめられシグナルが活性化していることがうかがわれた. 蛋白の細胞内分布はやや核に集積している傾向がみられたが細胞全体で認められた. 固体発生時には, シグナル下流でCBF-1蛋白と結合(CBF-dependent)しtarget geneであるHES-1の発現をみる. protein G beadsを用いた免疫沈降でこれをみたが活性型Notch1はCBF-1と結合しているがNotch2で結合は認められなかった. さらにsiRNAを用いてNotch1, 2を個別に抑制をかけたところ, Notch2の抑制はHES-1の発現に影響はおよぼしていなかった. これらより, このサブタイプのシグナル活性はCBF-independentでありHES-1以外のtargetを持っている可能性が示唆された. 現在, Notch signallingは, 腫瘍のアポトーシス回避に関連しているとの報告があり今後Notch2でこの関係をみていきたいと思っている. |
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ISSN: | 1345-4676 |