エタンブトールによる脱髄性末梢神経障害により急速進行性の歩行障害を呈した結核性胸腹膜炎の1例

「要旨」 : 症例は56歳女性. 腹部リンパ節腫大を契機にサルコイドーシスと診断され, 経過観察中に胸腹水貯留がみられた. 胸水・腹水の検査ではともにadenosine deaminase (ADA) 高値で結核が疑われたが細菌学的には診断に至らず, 胸腔鏡下胸膜生検を実施し, 結核性胸腹膜炎と診断した. イソニアジド, リファンピシン, エタンブトール, ピラジナミドの4剤で治療開始したが, 治療開始2週間後より下肢の痺れを自覚したためイソニアジドによる末梢神経障害を疑いイソニアジドを中止した. その後も症状は改善せず歩行困難をきたしたが, 全ての抗結核薬の中止により症状は改善し, エタンブ...

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Published in結核 Vol. 95; no. 2; pp. 73 - 77
Main Authors 福家麻美, 荻野広和, 坪井未希, 近藤真代, 香川耕造, 埴淵昌毅, 山崎博輝, 宮本亮介, 豊田優子, 西岡安彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.03.2020
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」 : 症例は56歳女性. 腹部リンパ節腫大を契機にサルコイドーシスと診断され, 経過観察中に胸腹水貯留がみられた. 胸水・腹水の検査ではともにadenosine deaminase (ADA) 高値で結核が疑われたが細菌学的には診断に至らず, 胸腔鏡下胸膜生検を実施し, 結核性胸腹膜炎と診断した. イソニアジド, リファンピシン, エタンブトール, ピラジナミドの4剤で治療開始したが, 治療開始2週間後より下肢の痺れを自覚したためイソニアジドによる末梢神経障害を疑いイソニアジドを中止した. その後も症状は改善せず歩行困難をきたしたが, 全ての抗結核薬の中止により症状は改善し, エタンブトールによる末梢神経障害が疑われた. 神経伝導検査では脱髄性の末梢神経障害を認め, 薬剤中止後, 比較的速やかに症状が改善した経過からも脱髄性末梢神経障害に矛盾しなかった. エタンブトールを除く3剤で治療を再開し, 神経障害が再燃することなく結核治療を完遂できた. エタンブトールによる末梢神経障害は多くはないが, 結核治療中に末梢神経障害を認めた際には, イソニアジドのみならずエタンブトールによる副作用を念頭におく必要があると考えられた.
ISSN:0022-9776