小児下顎大臼歯部に発生した歯牙エナメル上皮腫の1例

歯牙エナメル上皮腫は, エナメル上皮線維腫, エナメル上皮線維歯牙腫, 歯牙腫などと共に歯胚に由来する同一の疾患群とされる. 以前はエナメル上皮歯牙腫としてまとめられた比較的稀な歯原性混合腫瘍の一群とされた. 今回われわれは小児の下顎大臼歯部に発生した歯牙エナメル上皮腫の1例を経験したのでその概要を報告した. 症例 患者は初診時8歳4か月の男児. 反対咬合を主訴に矯正歯科受診時, X線写真で, 左下顎大臼歯部に歯牙腫様陰影を指摘され, 精査目的で1994年11月10日に当科初診. 初診時日遠心の歯槽部に骨様硬の隆起を認め, X線写真で7歯胚上方に多数の局在する顆粒状X線不透過像を認めた. 歯牙...

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Published in小児口腔外科 Vol. 7; no. 1; p. 62
Main Authors 宮地圭祐, 式守道夫, 龍口幹雄, 増本一真, 大澤孝行, 鈴木浩之, 山口万枝, 橋本賢二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児口腔外科学会 01.07.1997
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ISSN0917-5261

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Summary:歯牙エナメル上皮腫は, エナメル上皮線維腫, エナメル上皮線維歯牙腫, 歯牙腫などと共に歯胚に由来する同一の疾患群とされる. 以前はエナメル上皮歯牙腫としてまとめられた比較的稀な歯原性混合腫瘍の一群とされた. 今回われわれは小児の下顎大臼歯部に発生した歯牙エナメル上皮腫の1例を経験したのでその概要を報告した. 症例 患者は初診時8歳4か月の男児. 反対咬合を主訴に矯正歯科受診時, X線写真で, 左下顎大臼歯部に歯牙腫様陰影を指摘され, 精査目的で1994年11月10日に当科初診. 初診時日遠心の歯槽部に骨様硬の隆起を認め, X線写真で7歯胚上方に多数の局在する顆粒状X線不透過像を認めた. 歯牙腫の臨床診断で, 12月13日全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行. 腫瘍が7の歯胚を取り巻くように存在しており, 歯胚を損傷する恐れがあるため, 一部のみを摘出し開窓した. 病理組織学的所見では, 歯牙様構造物とそれに連続する歯原性上皮が歯堤状に増殖する像を認め, 歯牙エナメル上皮腫と診断された. その後経過観察していたが, 腫瘍の増大傾向はなかった. 歯胚の成長に伴い, 1995年8月22日, 再度全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行. 腫瘍は周囲の結合織様被膜で被われており, 一部が一塊として周囲より剥離・摘出され, 再び開窓した. その後さらに経過観察していたが, 腫瘍の増大傾向はなく, 7は萌出傾向が認められたため, 1996年8月, 局所麻酔下に腫瘍摘出術を施行. 腫瘍は周囲より一塊として完全に摘出された. 現在, 再発は認められず, 7は口腔内に萌出してきている. 考察 本症例では, 病理組織学的にはWHOの分類に従い歯牙エナメル上皮腫とした. 第1,2回の摘出標本比較して3回目の摘出標本では歯牙腫様成分が増していた点が注目された.
ISSN:0917-5261