自己赤血球を用いたパルボウイルスB19抗原スクリーニング法について

ヒトパルポウイルスB19(以下B19)は, 赤血球の前駆細胞などに存在するP抗原をレセプターとして感染し, 造血障害を引き起こすことが知られている. 今回我々は, ほとんどのヒトの赤血球上にP抗原が発現しているのに着目し, 自己赤血球凝集法によるB19抗原スクリーニング法を考案したので報告する. 【方法】試験用検体は再来者を含む11,516例の献血者血漿(EDTAまたはACD+EDTA採血, 期間平成7. 12~8. 7)を用いた方法はPK7200を用いて, 自己血漿10μlを凝集反応用緩衝液(デンカ生研製)1mlで希釈, 自己赤血球は前記の凝集反応用緩衝液で1.2%に希釈後, それぞれ25μ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 262
Main Authors 植野正秋, 松山雄一, 板垣佐知子, 山際仁, 増井富雄, 川崎汎, 鎌田公仁夫, 小島健一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:ヒトパルポウイルスB19(以下B19)は, 赤血球の前駆細胞などに存在するP抗原をレセプターとして感染し, 造血障害を引き起こすことが知られている. 今回我々は, ほとんどのヒトの赤血球上にP抗原が発現しているのに着目し, 自己赤血球凝集法によるB19抗原スクリーニング法を考案したので報告する. 【方法】試験用検体は再来者を含む11,516例の献血者血漿(EDTAまたはACD+EDTA採血, 期間平成7. 12~8. 7)を用いた方法はPK7200を用いて, 自己血漿10μlを凝集反応用緩衝液(デンカ生研製)1mlで希釈, 自己赤血球は前記の凝集反応用緩衝液で1.2%に希釈後, それぞれ25μlをオリンパス製血液型判定用P3プレートの同じウエルに分注して, 室温90分放置後目視で凝集の有無を判定した. 凝集が陽性となった例に対しては, 凝集価の測定, 抽出P抗原による凝集抑制試験, 抗原検出ELISA法, PCR法を行い特異性を確認した. 【結果】自己赤血球によるスクリーニングを行った結果, 5例(0.04%)が陽性であった凝集価は1例が2^7 であるのを除き, すべて2^11 以上の高値を示した. また抽出P抗原による凝集抑制試験, 抗原検出ELISA法, PCR法ともに前記凝集価が低値の1例を除きすべて陽性となった. 【考察】本法は被検者自身の血漿と赤血球を希釈分注するだけの非常に簡便な方法で, 血液型判定用プレートを使用でき, 赤血球試薬の劣化を気にしなくてよい. 非特異反応は1/11, 516(0.008%)と少なかった(非特異反応の原因については不明). P抗原陰性者は非常にまれで, 理論上B19に感染しないと考えられる本法の問題点として, 赤血球上P抗原濃度の個人差による反応性のバラツキが推定されるため, 今後単一な固定O型赤血球のスクリーニング法と比較する必要があると思われる.
ISSN:0546-1448