輸血後GVHDにおけるT細胞サブセットの変動

【目的】輸血後GVHDは, HLAを介した自己と非自己との認識に基づいた攻撃の結果であり, この点からは同種骨髄移植におけるGVHD発症と同じ機序が働いていると考えられる. 我々は, 急性GVHDの発症に一致して, CD8+/S6F1+細胞(細胞障害性T細胞)およびCD8+/CD57-細胞が増加することを報告している. (BHT;13, 181-185, 1994)そこで, このT細胞サブセットの変動を輸血後GVHDにおいても検討したので報告する. 【方法および結果】症例1)70才, 男性, 解離性大動脈瘤により人工血管置換術施行. 術時, 新鮮血, MAP輸血を受ける. day23より, 白...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 281
Main Authors 烏野隆博, 前田哲生, 手島博文, 平岡諦, 中村博行, 正岡徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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Summary:【目的】輸血後GVHDは, HLAを介した自己と非自己との認識に基づいた攻撃の結果であり, この点からは同種骨髄移植におけるGVHD発症と同じ機序が働いていると考えられる. 我々は, 急性GVHDの発症に一致して, CD8+/S6F1+細胞(細胞障害性T細胞)およびCD8+/CD57-細胞が増加することを報告している. (BHT;13, 181-185, 1994)そこで, このT細胞サブセットの変動を輸血後GVHDにおいても検討したので報告する. 【方法および結果】症例1)70才, 男性, 解離性大動脈瘤により人工血管置換術施行. 術時, 新鮮血, MAP輸血を受ける. day23より, 白血球減少, 皮疹, 肝障害出現. 皮膚生検, マイクロサテライトDNA解析より輸血後GVHDと診断. 症例2)73才, 女性, 陳旧性心筋梗塞のため, IABP下にてPTCA施行. 処置時の観血的止血に伴い, HAP血の輸血を受ける. day16より皮疹, 白血球減少, 肝障害出現. マイクロサテライトDNA解析より輸血後GVHDと診断. 症例3)67才, 女性, 膀胱腫瘍の診断のもとに膀胱全摘術施行. 新鮮血, 保存血の輸血を受ける. day11より皮疹. 白血球減少, 下痢が出現し, 臨床的に輸血後GVHDと診断. これら3例に対し, GVHD発症時の末梢血を単核球分離した後, CD8^+ リンパ球サブセットの変動についてCD8/S6F1およびCD8/CD57の二重染色を行った. コントロールとしてボランティア13人のリンパ球において同様の検討を行った. CD8^+ S6F1f^+ 細胞においては, 正一常人コントロール:13±4%に対してそれぞれ69%, 66%, 52%であり, cD8+/CD57-細胞においては, 正常コントロール:14±4%に対して59%, 58%, 69%と共に著しい上昇を示した. 【考案】上記T細胞サブセットは1. 輸血後GVHDにおいても同種骨髄移植後GVHDと同様な変動を示す. 2. 輸血後GVHDの早期診断に有用であると考えられる.
ISSN:0546-1448