自己血貯血のためのドナー・ケア対策
(目的)採血時合併症発生の大部分は, 採血に伴う不安や緊張による副交感神経の緊張が引き金となる. 当院でも1989年9月から1996年10月までに, 採血時合併症を1185例中17例経験したが, 予防対策を検討すること, および患者の自己血輸血に対する理解度や採血時の患者の精神面について知る目的で, 患者へのアンケート調査を行った. (方法)自己血輸血対象患者の初回採血後と手術後に前記のアンケート調査を実施した. 初回採血後は輸血部技師または看護婦が調査を行い, 手術後は主治医が行った. (結果)対象患者69名の回答を集計した. 41%が採血前の恐怖感・緊張感・不安を訴え, その不安の内容は穿...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 303 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1997
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | (目的)採血時合併症発生の大部分は, 採血に伴う不安や緊張による副交感神経の緊張が引き金となる. 当院でも1989年9月から1996年10月までに, 採血時合併症を1185例中17例経験したが, 予防対策を検討すること, および患者の自己血輸血に対する理解度や採血時の患者の精神面について知る目的で, 患者へのアンケート調査を行った. (方法)自己血輸血対象患者の初回採血後と手術後に前記のアンケート調査を実施した. 初回採血後は輸血部技師または看護婦が調査を行い, 手術後は主治医が行った. (結果)対象患者69名の回答を集計した. 41%が採血前の恐怖感・緊張感・不安を訴え, その不安の内容は穿刺時の痛みに対するものが最も多かった. しかし, 実際の採血中の気分は「なんともない」が88%であった. 鉄剤の副作用は消化器症状・黒色便, エリスロポエチンでは倦怠感・頭痛などがあり, それぞれ11%, 9%に認められた. 主治医のインフォームド・コンセント(IC)前の自己血輸血に対する理解度は35%であったが, ICにより, ほとんどの患者が理解をしたと回答した. 対象患者の自己血使用率, 同種血回避率はそれぞれ100%, 96%であったが, 手術後の調査では100%の患者が自己血貯血をしてよかったと回答した. しかし, 採血時間が長いことや, 採血量が多いのではないかという不満も少数認められた. (考察および結語)アンケートの結果, 採血前に不必要な緊張が強いことが示唆され, さらにICの徹底が必要と思われた. 患者が快適な自己血貯血を行うためには, (1)貯血期間中の生活指導や心得などを記載した, さらにわかりやすい自己血輸血説明書の作成(2)採血前の患者への問診表の作成(3)起こり得る副作用への対応マニュアルの作成などが必要と思われた. |
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ISSN: | 0546-1448 |