産科領域におけるβ2GPI依存性抗カルジオリピン抗体の関与について

生殖免疫領域において自己免疫異常が注目され, 特に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなどの抗リン脂質抗体の出現と血栓症・血小板減少症・および流・死産などの病態との関連が示唆されている. また抗リン脂質抗体は, 子宮内胎児死亡(IUFD), 子宮内胎児発育遅延(IUGR), 早期の妊娠中毒症, 子宮内膜症, 不妊にも関与することから, Reproductive Autoimmune Failure Syndrome(RAFS)なる概念も提唱されている. 最近, 抗カルジオリピン抗体とカルジオリピンを含めた陰性荷電を有するリン脂質との結合に, β2-Glycoprotein I(β2...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 1041
Main Authors 前島正基, 藤井知行, 武谷雄二, 柴田洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1994
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ISSN0546-1448

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Summary:生殖免疫領域において自己免疫異常が注目され, 特に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなどの抗リン脂質抗体の出現と血栓症・血小板減少症・および流・死産などの病態との関連が示唆されている. また抗リン脂質抗体は, 子宮内胎児死亡(IUFD), 子宮内胎児発育遅延(IUGR), 早期の妊娠中毒症, 子宮内膜症, 不妊にも関与することから, Reproductive Autoimmune Failure Syndrome(RAFS)なる概念も提唱されている. 最近, 抗カルジオリピン抗体とカルジオリピンを含めた陰性荷電を有するリン脂質との結合に, β2-Glycoprotein I(β2GPI)の存在が必須であることが明らかになり, 従来の固相酵素免疫測定系に精製したβ2GPIを加えた測定法が開発された. 〔目的と方法〕連続2回以上の初期流産を有する反復流産患者72例, 妊娠中毒症を伴わないIUGR症例13例, およびIUFD症例(既往を含む)26例におけるβ2GPI依存性抗カルジオリピン抗体を抗カルジオリピンキット「ヤマサ」EIAを用いて測定し検討した. 正常カットオフ値は, 正常妊婦175例の99パーセンタイル値1.3unit/mlとした. 〔結果〕反復流産患者, 妊娠中毒症を伴わないIUGR症例およびIUFD症例における抗体価の平均値は, それぞれ0.3unit/ml, 0.04unit/ml, 0.5unit/ml, 陽性率は, それぞれ2.7%, 0%, 7.7%であった. 反復流産患者, 妊娠中毒症を伴わないIUGR症例では, 正常妊婦との間に有意差は認めなかったが, IUFD症例では, 有意差を認めた. 〔結論と考察〕反復初期流産患者, 妊娠中毒症を伴わないIUGR症例では, β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体の関与は確認できなかった. また, IUFD症例では統計上有意差を認めたが, その分布は反復流産患者のそれと変わらず, 恐らく母数nの影響によるものと思われる. 今後は, IUFD症例数を増やし再検討したいと考えている.
ISSN:0546-1448