馬尾神経に原発した悪性リンパ腫の一例

悪性リンパ腫の中枢神経系の発生は比較的少なく, 脊髄発生は極めて稀である. 今回下肢症状で初発し術前後の全身検索より馬尾原発と考えられた悪性リンパ腫の一例を経験したので報告する. 症例は43歳, 男性. 平成12年12月初旬に誘因無く腰痛, 左下肢痛出現. 近医受診, 保存療法行うも改善せず, 発症後2週間で当院紹介となった. 初診時左下肢の筋力低下と知覚障害を認め, 排尿障害を伴っていた. MRIにてL1-3レベルに境界不明瞭で脊柱管内腔をほぼ占める占拠病変を認めた. ミエログラフィーはL2/3レベルで造影柱のcomplete blockを認めた. 髄液はxanthochromiaを呈し,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in整形外科と災害外科 Vol. 52; no. 2; p. 442
Main Authors 横須賀公章, 神保幸太郎, 高宮啓彰, 眞島武, 安藤則行, 佐藤公昭, 永田見生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 25.03.2003
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:悪性リンパ腫の中枢神経系の発生は比較的少なく, 脊髄発生は極めて稀である. 今回下肢症状で初発し術前後の全身検索より馬尾原発と考えられた悪性リンパ腫の一例を経験したので報告する. 症例は43歳, 男性. 平成12年12月初旬に誘因無く腰痛, 左下肢痛出現. 近医受診, 保存療法行うも改善せず, 発症後2週間で当院紹介となった. 初診時左下肢の筋力低下と知覚障害を認め, 排尿障害を伴っていた. MRIにてL1-3レベルに境界不明瞭で脊柱管内腔をほぼ占める占拠病変を認めた. ミエログラフィーはL2/3レベルで造影柱のcomplete blockを認めた. 髄液はxanthochromiaを呈し, 総蛋白の上昇を認めた. 症状の急激な進行を認めたため平成12年12月28日緊急手術施行した. 後方侵入でL1-L3を椎弓切除, 硬膜を切開すると, 高度に腫大し癒着した馬尾を認めた. 灰白色に変色腫大した部分を切除した. 組織診断はmalignant lymphoma, diffuse large B-cell typeであった. 術後, 放射線治療(total 30Gy), 化学療法, 髄腔内注射を行うも効果なくTh11以下完全麻痺となった. その後, 頸椎MRIにてC4-C6レベルの浸潤, 頭部CTにて延髄への浸潤認め, 呼吸状態悪化にて, 7月17日死亡した. 本例は初診時に悪性リンパ腫の既往は無く, 表在リンパ節も触知せず, 血液検査でも明らかな異常は見られなかった. また手術所見でも病変は馬尾に限局しており, 術後に行った全身CTやGaシンチでも他に病変は見られないため, 馬尾原発の悪性リンパ腫と判断した.
ISSN:0037-1033