持続可能な開発目標 (SDGs) の保健目標とジェンダー目標を相乗的に達成するには : 日本とイギリスの比較研究から

「要旨」 「目的」 本研究の目的は, 日本でSDGsの保健目標(目標3)とジェンダー目標(目標5)を相乗的に達成していくために日本が取るべき具体的方策を, ジェンダー分析に基づいた日本とイギリスの比較から明確化することである. 「方法」 日本では, ジェンダー平等を目指して活動する機関のジェンダー専門家8名と産婦人科医2名に, イギリスでは, 保健とジェンダーの分野に深く関わりのある政府組織, 市民社会, アカデミアから9名に, 性と生殖に関わる健康・権利ならびにジェンダーに基づく暴力対策の現状につき, 詳細面談および文献調査を実施した. テープ起こしをした原稿につき, 質的内容分析を実施した...

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Published in国際保健医療 Vol. 35; no. 1; pp. 49 - 64
Main Authors 村上仁, 神田未和, 中島玖, 澤柳孝浩, 曽我建太, 濱田憲和, 池上清子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本国際保健医療学会 20.03.2020
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Summary:「要旨」 「目的」 本研究の目的は, 日本でSDGsの保健目標(目標3)とジェンダー目標(目標5)を相乗的に達成していくために日本が取るべき具体的方策を, ジェンダー分析に基づいた日本とイギリスの比較から明確化することである. 「方法」 日本では, ジェンダー平等を目指して活動する機関のジェンダー専門家8名と産婦人科医2名に, イギリスでは, 保健とジェンダーの分野に深く関わりのある政府組織, 市民社会, アカデミアから9名に, 性と生殖に関わる健康・権利ならびにジェンダーに基づく暴力対策の現状につき, 詳細面談および文献調査を実施した. テープ起こしをした原稿につき, 質的内容分析を実施した. 「結果」 「避妊・人工妊娠中絶」, 「性感染症対策」, 「性教育」, 「婦人科系がん対策」, 「ジェンダーに基づく暴力対策」の各項目につき, ジェンダー視点からみた日英の現状を明らかにした. 比較の結果, 特に「避妊・人工妊娠中絶」, 「性教育」, 「ジェンダーに基づく暴力対策」につき, 両国の取り組みに差が見られた. イギリスではジェンダー・トランスフォーマティブ(女性の状況の改善だけでなく女性の社会的地位を改善し, 彼女たちが権利を十分に行使できることを目指す)な取り組みが行われている一方, 日本ではそのような取り組みに未だ踏み出していない施策として, 1)避妊法の選択肢の確保と費用の低減化(緊急避妊薬へのアクセス改善を含む), 2)人工妊娠中絶を女性の意志のみで実施できるようにすること, 3)人間関係を含めた包括的な性教育の体系的な実施, 4)ジェンダーに基づく暴力に対応する戦略策定の4点が明らかとなった. 「結論」 結果から導かれた4点を進めることで, 日本においてSDGsの目標3と目標5を相乗的に達成していけると思われる. そのためには, 政策決定への市民社会の参画の拡大と, 女性議員比率の向上が助けになると考えられる.
ISSN:0917-6543