輸血時に発熱副作用を発生する卵巣癌患者に対しての洗浄血小板製剤輸血経験について

(目的) 血小板製剤輸血時に発生する発熱副作用の原因として, 抗HLA抗体, 抗HPA抗体の関与が知られている. 今回我々は, 抗HLA抗体を保有する卵巣癌患者に, HLA適合血小板製剤を輸血したにも関わらず, 発熱, 悪寒等の輸血副作用を呈した患者に, 洗浄HLA適合血小板を使用し良好な結果を得たので報告する. (症例) 患者は平成7年2月卵巣癌により入院, 貧血改善の為, 術前に血球製剤6単位, 血小板製剤20単位の輸血を受け, 術後も抗腫瘍製剤の投与により貧血と血小板の減少をきたし, 頻回の輸血を必要とした. 輸血の効果は得られたが, 血小板輸血時に発熱, 悪寒等の輸血副作用を認めた....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 253
Main Authors 榎本美佳子, 尾澤正行, 源田辰雄, 秋元正浩, 榎本隆行, 青木延雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:(目的) 血小板製剤輸血時に発生する発熱副作用の原因として, 抗HLA抗体, 抗HPA抗体の関与が知られている. 今回我々は, 抗HLA抗体を保有する卵巣癌患者に, HLA適合血小板製剤を輸血したにも関わらず, 発熱, 悪寒等の輸血副作用を呈した患者に, 洗浄HLA適合血小板を使用し良好な結果を得たので報告する. (症例) 患者は平成7年2月卵巣癌により入院, 貧血改善の為, 術前に血球製剤6単位, 血小板製剤20単位の輸血を受け, 術後も抗腫瘍製剤の投与により貧血と血小板の減少をきたし, 頻回の輸血を必要とした. 輸血の効果は得られたが, 血小板輸血時に発熱, 悪寒等の輸血副作用を認めた. 平成8年2月腹壁瘢痕ヘルニアの手術のため再入院, 術後, 貧血(Hb6. 7g/dl)と血小板の減少(4×10^4 /ml)により出血傾向が認められたため, 血小板製剤20単位を2日連続で輸血したが血小板数の増加が認められず, 発熱, 悪寒等の副作用が発生した. 日赤血液センターへ抗HLA抗体, 抗血小板抗体の検査を依頼し, HLA適合血小板の供給を受けたが発熱性の副作用は不変であった為, 洗浄血小板の使用を検討し, 血液センターに協力を依頼した. (成績及び結果) 患者は血小板輸血効果の得られなかった再入院時の検査で抗HLA抗体陽性, 抗HPA抗体陰性であった. 抗HLA抗体は多特異性で同定不能であった. 患者のHLAタイプはA2A11.1, B62B-, Cw4Cw9であった. その他, 患者の主な赤血球系の抗原に対する抗体は陰性, 血漿蛋白は蛋白分画検査において異常は認められなかった. HLA適合血小板を4回使用したが発熱性副作用が発生したが, その後は洗浄HLA適合血小板を4週間に14回使用することにより輸血副作用の発生を軽減或いは防止出来た. 患者の血小板数が, 6.5×10^4 /ml化回復したため, その後は血小板輸血を中止した. (考察) 患者は初回入院時の輸血では発熱等の副作用が認められるたものの血小板数の増加は認められたが, 再入院時には効果が得られなくなったことから, 抗HLA抗体は初回入院時の輸血により産生されたものと思われた. 副作用の発生原因は今回の検査からは特定出来なかったが, 血小板製剤輸血時に発生することから血漿蛋白成分に起因するのではないかと考えた. HLA適合血小板の使用によっても改善されなかった副作用の発生が洗浄HLA適合血小板の使用により明らかな軽減, 及び防止がはかれた事から, この様な原因の特定出来ない副作用を伴う患者に対しても洗浄血小板の使用は有効な方法であると考える.
ISSN:0546-1448