臍帯血のbankingを目的とした分離保存法の検討

【目的】 我々は臍帯血を兄弟間造血幹細胞移植に用いて良好な結果を得ている. 更に同種間移植に用いる目的で臍帯血の分離, 保存法について若千の検討を行い, bankingを開始したのでその現状を合わせて報告する. 【方法】 (1)当院にて出産予定の妊婦10例より, informed consentを得た上, 出産時に臍帯血を採取し, 採取量, 有核細胞数, CFU-GM数, CD34陽性細胞数を計測した. (2)これらの臍帯血をa. Ficoll-Conray(比重:1.090)b. HES(Hessol)にて分離しそれぞれProgram凍結して液体窒素中に保存, 1ヶ月以上経過後に解凍して,...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 289
Main Authors 板垣浩行, 城所正子, 倉島志保, 土田文子, 武井美恵子, 兵藤理, 高松真由子, 中村嘉彦, 猪口貞樹, 萩原政夫, 矢部普正, 加藤俊一, 岩崎克彦, 牧野恒久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】 我々は臍帯血を兄弟間造血幹細胞移植に用いて良好な結果を得ている. 更に同種間移植に用いる目的で臍帯血の分離, 保存法について若千の検討を行い, bankingを開始したのでその現状を合わせて報告する. 【方法】 (1)当院にて出産予定の妊婦10例より, informed consentを得た上, 出産時に臍帯血を採取し, 採取量, 有核細胞数, CFU-GM数, CD34陽性細胞数を計測した. (2)これらの臍帯血をa. Ficoll-Conray(比重:1.090)b. HES(Hessol)にて分離しそれぞれProgram凍結して液体窒素中に保存, 1ヶ月以上経過後に解凍して, 分離, 保存に伴うCFU-GM数の回収率を計測した. (3)解凍後の脱DMSO操作がCFU-G亜数の回収率に及ぼす影響を計測した. (4)以上の結果を踏まえてプロトコールを作成し, 臨床規模での臍帯血のbankingを開始した 【結果】 (1)採取時の血液量は75±24ml, 有核胞数7.8±4.1×10^8 個, CFU-GM数3.3±2.2×10^5 個, CD34陽性細胞数2.8±1.1x10^6 個であった. (2)比重分離, HES分離を行い, 凍結解凍後のCFU-GM数の回収率を比較したところ, 両者とも約75%で差は見られなかった (3)解凍後の脱DMSO操作によりCFU-GM数は有意に減少した (4)CFU-GM数は採血量及びCD34陽性細胞数とは有意な相関が見られたが, 有核細胞数との相関は見られなかった. (5)臨床規模での臍帯血bankingを開始したところ一採取例が20~30件/月, うち採取量50ml以上のものは約半数である. 【結語】 HES分離, 液体窒素保存, 解凍後直ちに投与する方法により比較的簡便に臍帯血の保存が可能であり, 乳幼児には十分な量の造血幹細胞が得られるものと考えられた. 現在臨床規模で保存されている臍帯血の質に関する検討を合わせて報告する.
ISSN:0546-1448