超音波検査で炎症経過を形態的に観察した甲状腺中毒症を伴う急性化膿性甲状腺炎の1例

「要旨」急性化膿性甲状腺炎に伴う重度甲状腺中毒症を呈する症例を経験し, 経時的に超音波検査 (US) で炎症過程を形態的に観察した. 急性化膿性甲状腺炎の炎症過程をUSで経過観察した報告は少ない. 症例は8歳, 女児. 発熱, 咽頭痛, 左前頸部の圧痛と軽度腫脹を主訴に近医小児科を受診. 血液検査でCRP高値を認め, 当院小児科に紹介入院となった. 初診時, 前頸部に皮膚発赤を認めず, USでは甲状腺左葉に限局した低エコー腫瘤を認めた. 血液検査で白血球増多, CRP異常高値, 重度甲状腺中毒症を認めた. 抗菌薬投与で一時軽快したが, 26日後に皮膚発赤の出現と, USにて低エコー域の皮下への...

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Published in日本甲状腺学会雑誌 Vol. 13; no. 1; pp. 63 - 69
Main Authors 新嶋綾, 千田智彦, 周山理紗, 伊藤吾子, 平木彰佳, 八代享
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本甲状腺学会 27.04.2022
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Summary:「要旨」急性化膿性甲状腺炎に伴う重度甲状腺中毒症を呈する症例を経験し, 経時的に超音波検査 (US) で炎症過程を形態的に観察した. 急性化膿性甲状腺炎の炎症過程をUSで経過観察した報告は少ない. 症例は8歳, 女児. 発熱, 咽頭痛, 左前頸部の圧痛と軽度腫脹を主訴に近医小児科を受診. 血液検査でCRP高値を認め, 当院小児科に紹介入院となった. 初診時, 前頸部に皮膚発赤を認めず, USでは甲状腺左葉に限局した低エコー腫瘤を認めた. 血液検査で白血球増多, CRP異常高値, 重度甲状腺中毒症を認めた. 抗菌薬投与で一時軽快したが, 26日後に皮膚発赤の出現と, USにて低エコー域の皮下への拡大と皮下膿瘍形成を認めた. 切開膿瘍ドレナージを施行し, USで低エコー域の縮小を認めた. 下咽頭食道造影検査およびUSから, 下咽頭梨状窩瘻に起因した急性化膿性甲状腺炎と診断した. 甲状腺機能は一過性潜在性機能低下症を経て正常化した. USによる発症初期からの経時的観察が, 炎症過程を把握する上で有用であった.
ISSN:2185-3126