成人期大動脈縮窄症に対し弓部大動脈全置換術を施行した体外循環の経験

「要旨」成人期大動脈縮窄症(coarctation of aorta in adults: CoA)に対する体外循環を2症例経験した. 症例は57歳男性と16歳男性, CoAと大動脈弁閉鎖不全症(aortic valve regurgitation: AR)と診断された. CoAでは胸部大動脈から下半身への血流が不十分であるために, 下半身への側副血行路が発達し, 選択的脳灌流(selective cerebral perfusion: SCP)が側副血行路を介して下半身へ盗血(steal)され, 脳灌流不足と末梢側吻合時の視野の妨げとなる可能性があった. 目標温度を20℃として冷却を行い,...

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Published in体外循環技術 Vol. 47; no. 1; pp. 43 - 46
Main Authors 金谷太嗣, 田辺克也, 山下雄作, 中田貴丈, 鈴木奈々絵, 飛田瑞穂, 田中千久, 田辺貴幸, 佐藤耕一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.03.2020
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ISSN0912-2664

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Summary:「要旨」成人期大動脈縮窄症(coarctation of aorta in adults: CoA)に対する体外循環を2症例経験した. 症例は57歳男性と16歳男性, CoAと大動脈弁閉鎖不全症(aortic valve regurgitation: AR)と診断された. CoAでは胸部大動脈から下半身への血流が不十分であるために, 下半身への側副血行路が発達し, 選択的脳灌流(selective cerebral perfusion: SCP)が側副血行路を介して下半身へ盗血(steal)され, 脳灌流不足と末梢側吻合時の視野の妨げとなる可能性があった. 目標温度を20℃として冷却を行い, 超低体温循環停止(deep hypothermic circulatory arrest: DHCA), 1症例は間欠的SCP併用で末梢側吻合を行った. 最低温度は16℃と20.2℃, 循環停止時間は59分と34分, 完全循環停止時間は34分と12分であった. 2症例とも主要心脳血管イベント(major adverse cardiac and cerebrovascular events: MACCE)は発生せず, 退院となっている. 成人期CoAでは長時間の循環停止を必要とする可能性があり, 通常以上に脳保護の安全性を意識して操作する必要がある.
ISSN:0912-2664