子宮筋腫患者に見られた抗Cw 抗体について

(目的)Rh式血液型に対する抗体は比較的よく検出される抗体であるが, 日本人における抗C^w 抗体の報告例は1988年丸山らによるIgM型と, 松本らによる術後の患者より検出されたIgG型の2例のみであった. 今回我々は, 子宮筋腫による不正出血の為貧血をきたした患者の血清中に抗C^w 抗体と抗S抗体を検出したので報告する. (症例)患者H. T. は46歳の女性, 1993年4月不正出血が続いた為, 当院婦人科を受診し入院となる. H. T. の妊娠は6回(帝切による出産2回, 早産1回, 流産3回)1969年第1子帝切に依る分娩時に輸血歴がある. 入院時検査にて糖尿病と診断された. 入院後...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 1072
Main Authors 榎本美佳子, 尾澤正行, 源田辰雄, 榎本隆行, 半戸啓一, 服部理男, 内川誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.12.1994
Online AccessGet full text
ISSN0546-1448

Cover

More Information
Summary:(目的)Rh式血液型に対する抗体は比較的よく検出される抗体であるが, 日本人における抗C^w 抗体の報告例は1988年丸山らによるIgM型と, 松本らによる術後の患者より検出されたIgG型の2例のみであった. 今回我々は, 子宮筋腫による不正出血の為貧血をきたした患者の血清中に抗C^w 抗体と抗S抗体を検出したので報告する. (症例)患者H. T. は46歳の女性, 1993年4月不正出血が続いた為, 当院婦人科を受診し入院となる. H. T. の妊娠は6回(帝切による出産2回, 早産1回, 流産3回)1969年第1子帝切に依る分娩時に輸血歴がある. 入院時検査にて糖尿病と診断された. 入院後, RBC2.61×10^6 /ul Hb7.4g/dlと貧血が進行したため輸血が必要となり, 血液型検査, 抗体スクリーニング, 交差試験をおこなった. 成績)患者の血液型はO型C+e+D+E+e+C^w -M+N+S-s+U(+)P1(-)Le(a+b-)Lu(a-b+)K-k+Kp(a-b+)Js(a-b+)Fy(a+b-)Jk(a+b-)Jr(a+)Di(a-b+)Xg(a+)であった. 患者の血清中の不規則性抗体は抗C^w 抗体がPBA法8倍, AGT法16倍, 抗S抗体がPBA法8倍, AGT法16倍であり, 18ヶ月後の検査でも抗体価の変動は認められなかった. 又2-MEに抵抗性を示した事から抗体はIgG型と考えられた. H. T. は直接クームス試験陽性であったが患者血球からの解離液中には, 抗C^w 抗体, 抗S抗体は認められなかった. 夫の血液型検査では, 患者の保有する抗体に対する抗原は陰性であった. (まとめ)患者H. T. はIgG型の抗C^w 抗体, 抗S抗体を保有していたが, 夫がH. T. の保有する抗体に対応する抗原陰性であることから, 妊娠による抗原刺激は無かったと考えられる. 又, 過去に輸血歴があり日本人のS抗原性頻度が, 約11%(S+s-0.5% S+s+10.5%)である抗S抗体については輸血による産生も考えられるが, 抗C^w 抗体については, 日本人でのC^w 抗原陽性の報告例はなく, 輸血によるものとは考えにくく自然抗体と考えられる. 各抗体の変動について今後も追跡してゆきたいと考えている.
ISSN:0546-1448