虚血性心筋病変の発生機序と病態

心臓の虚血性病変は冠動脈の狭窄閉塞により, その支配領域の心筋細胞への酸素の供給が需要量を下回り, 心筋細胞の好気的代謝が阻害されることで発生する. このように心筋細胞の虚血は酸素量の低下か, 酸素需要量が増大するかのどちらかに原因がある. 特に酸素供給側の因子としては冠動脈硬化症や冠攣縮による動脈の機能的狭窄がある. 酸素需要を左右する因子としては, 心筋細胞の収縮性, 心拍数, 心室壁の張力などが原因となり酸素の需要量が増大する. 以上, 虚血心筋細胞障害の発生進展に影響する重要な因子としては虚血時間, 虚血部の血流状態および心筋細胞の代謝異常などが考えられる. 1. 虚血再灌流後の心筋細...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 69; no. 6; pp. 602 - 603
Main Author 淺野伍朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.11.2002
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ISSN1345-4676

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Summary:心臓の虚血性病変は冠動脈の狭窄閉塞により, その支配領域の心筋細胞への酸素の供給が需要量を下回り, 心筋細胞の好気的代謝が阻害されることで発生する. このように心筋細胞の虚血は酸素量の低下か, 酸素需要量が増大するかのどちらかに原因がある. 特に酸素供給側の因子としては冠動脈硬化症や冠攣縮による動脈の機能的狭窄がある. 酸素需要を左右する因子としては, 心筋細胞の収縮性, 心拍数, 心室壁の張力などが原因となり酸素の需要量が増大する. 以上, 虚血心筋細胞障害の発生進展に影響する重要な因子としては虚血時間, 虚血部の血流状態および心筋細胞の代謝異常などが考えられる. 1. 虚血再灌流後の心筋細胞の形態的, 機能的変化 実験的には冠動脈の結紮30分後には心内膜側の虚血領域に細胞周囲の浮腫性変化が発現し, 1時間後には心筋細胞に, 浮腫性変化は進展する. そして, 虚血心筋細胞の収縮帯壊死や融解といった不可逆性の変化が発現する. 免疫組織化学的にもクレアチンホスフォキナーゼ(CPK)やミオグロビンの染色性の低下が観察される.
ISSN:1345-4676