ヒト由来モノクローナル抗-Fyb抗体の作製

【目的】 ヒト由来モノクローナル抗体の利点として, 1)半永久的な製造2)安定した品質3)特異性が高いなどの点があげられる. また, 近年FDAは人道的な問題から商業レベルでの人為的な免疫の中止を勧告し, 血液型検査に必要なヒト由来抗体の安定した供給は, 次第に困難になると思われる. 従って, 各血液型抗原に対する特異性を示すモノクローナル抗体の作製は, 重要な課題となっている. 【方法および結果】 抗-Fyb抗体を産生している献血者バフィーコートからB細胞を分離し, EBウイルスでトランスフォームを行った. 数週間培養した後, トランスフォーム細胞とミエローマ細胞JMS-3とをポリエチレング...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 229
Main Authors 豊田智津, 篠崎久美子, 鈴木由美, 宮村友造, 内川誠, 赤座達也, 中島一格, 十字猛夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】 ヒト由来モノクローナル抗体の利点として, 1)半永久的な製造2)安定した品質3)特異性が高いなどの点があげられる. また, 近年FDAは人道的な問題から商業レベルでの人為的な免疫の中止を勧告し, 血液型検査に必要なヒト由来抗体の安定した供給は, 次第に困難になると思われる. 従って, 各血液型抗原に対する特異性を示すモノクローナル抗体の作製は, 重要な課題となっている. 【方法および結果】 抗-Fyb抗体を産生している献血者バフィーコートからB細胞を分離し, EBウイルスでトランスフォームを行った. 数週間培養した後, トランスフォーム細胞とミエローマ細胞JMS-3とをポリエチレングリコールで細胞融合させた. クローニングを繰り返し, 安定した抗体産生株抗-Fyb(1E3-3G6)を得た. 食塩水法で強い凝集反応を認めた. 培養上清を2-メルカプトエタノール処理することで凝集活性が消失したため, 免疫グロブリンクラスはIgMと考えた. 抗-Fybの抗体価はFy(a-b+)血球と64倍, Fy(a+b+)血球と32倍で, Fy(a+b+)16例, Fy(a-b+)1例と陽性, Fy(a+b-)103例とは陰性であった. Fy(a-b+)血球をα-chymotrypsin, trypsin, pronase, ficin, papain, neuraminidaseの各酵素で処理した後, 抗-Fyb抗体との反応をみた. α-chymotrypsin, pronase, ficin, papain処理では反応が陰性で, trypsin処理で反応が増強し, neuraminidase処理では反応に影響が認められなかった. 【考察】 抗-Fybの特異性を示す抗体産生細胞を得た. 今回作製できた抗-FybはIgMタイプであるため, 直接凝集反応で簡単に赤血球上のFyb抗原の有無を判定できる. また抗-Fybは, 溶血性輸血副作用の原因抗体として重要であるため, Fyb抗原陰性血液の選択や, Duffy血液型の判定に大変有用である.
ISSN:0546-1448