婦人科癌における末梢血幹細胞移植(PBSCT)併用による大量化学療法の試み

【目的】骨髄抑制がdose limiting factorとなっている薬剤を使用する化学療法は, PBSCTの導入によりそのdose intensityのさらなる追求力可能となり, 血液疾患や種々の固形癌の治療に応用され, その有用性が報告されている. 今回, 初回手術後腫瘍の残存したIII期卵巣癌に対してPBSCTを併用した大量化学療法を施行し, その臨床効果, 副作用につき検討したので報告する. 【対象】卵巣癌stage pT3c8例(低分化型腺癌5例, 明細胞癌1例, 卵黄嚢腫傷1例, 漿液性嚢胞腺癌1例)を対象とした. 【方法】化学療法は6例にJE(CBDCA, Etopodde)療法...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 258
Main Authors 池羽一紀, 大久保貴司, 高木章美, 竹田省, 木下勝之, 諏訪多順二, 鈴木康文, 木村昌行, 前田平生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】骨髄抑制がdose limiting factorとなっている薬剤を使用する化学療法は, PBSCTの導入によりそのdose intensityのさらなる追求力可能となり, 血液疾患や種々の固形癌の治療に応用され, その有用性が報告されている. 今回, 初回手術後腫瘍の残存したIII期卵巣癌に対してPBSCTを併用した大量化学療法を施行し, その臨床効果, 副作用につき検討したので報告する. 【対象】卵巣癌stage pT3c8例(低分化型腺癌5例, 明細胞癌1例, 卵黄嚢腫傷1例, 漿液性嚢胞腺癌1例)を対象とした. 【方法】化学療法は6例にJE(CBDCA, Etopodde)療法, 1例にJEM(CBDCA, Etoposide, MMC)療法, 1例にCJP(CPA, CBDCA, CDDP)療法を行った. 化療の同類は5または8コースであり, その間PBSCTを併用した大量化学療法を2~5コース行った. 大量化学療法では, CBDCA, expected AUC7.0~8.0(600mg~800mg/body)とし, Etoposide300~400mg/平方メートル×3日間(1200~1800mg/body), CPM800/平方メートル(1200mg/body)を投与した. 【成績】PBSC採取は13コースにおいて36回行われ, 1コース当たりの採取CD34陽性細胞数は平均18.50±23.68×10^6 /kg, また患者1人当たりでは30.06±26.02×10^6 /kgであったPBSCTは27回行われ, 移植CD34陽性細胞数は平均8.91±7.07×10^6 /kgであった大量化学療法27コース中で, 血小板輸血は17コース(63%), MAP血輸血は12コース(44%)に施行された. また, WBC1000以下となったのは11コース(41%)に見られた. 治療成樹はCR6例, PR2例であった. CR6症例中5例が現在disease free(6~18ヵ月)で経過, 明細胞癌の1例がdisease free6ヵ月後再発し, 現在化学療法中である. 初回治療としての化学療法終了時点のCBDCA投与量は平均132.1mg/平方メートル/week, Etoposide投与量は192.5mg/平方メートル/weekであった. 【結論】PBSC-rを併用した大量化学療法(EJ, CJP, JEM療法)では, 骨髄機能のサポートなしでは使用できない量のhigh dose chemotherapyが施行でき, 副作用はあるものの重篤なものとはならず, 治療を遂行することができた. 今後症例数を追加すると共に長期成績を検討したい.
ISSN:0546-1448