脊椎外科における輸血の適応と選択
【目的】脊椎外科手術のうち一部には輸血が必要であるが, 疾患, 術式により術前の期間や出血量が異なっている. これら脊椎手術での周術期の輸血の適応を明らかにする. 【方法】頚椎, 胸椎, 腰椎と高位別に分け, 除圧術のみか固定術かに分けてそれぞれの手術別に同種血輸血, 自己血輸血の適応について述べる. 【各論】頚椎後方除圧術:椎弓切除術, 椎弓形成術1脊髄腫瘍摘出術で輸血不要. 頚椎後縦靭帯骨化症で除圧範囲が広い場合や貧血患者で数百mlの出血でも全身状態に影響がある症例では術中回収式自己血輸血. 頚椎後方固定術:輸血準備は不要な場合が多い. 関節リウマチで後頭骨から全頚椎を固定する症例など広範...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 196 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.05.2003
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 【目的】脊椎外科手術のうち一部には輸血が必要であるが, 疾患, 術式により術前の期間や出血量が異なっている. これら脊椎手術での周術期の輸血の適応を明らかにする. 【方法】頚椎, 胸椎, 腰椎と高位別に分け, 除圧術のみか固定術かに分けてそれぞれの手術別に同種血輸血, 自己血輸血の適応について述べる. 【各論】頚椎後方除圧術:椎弓切除術, 椎弓形成術1脊髄腫瘍摘出術で輸血不要. 頚椎後縦靭帯骨化症で除圧範囲が広い場合や貧血患者で数百mlの出血でも全身状態に影響がある症例では術中回収式自己血輸血. 頚椎後方固定術:輸血準備は不要な場合が多い. 関節リウマチで後頭骨から全頚椎を固定する症例など広範囲固定では術中回収式自己血輸血. 頚椎前方固定術:一般に輸血不要. 広範囲の椎体亜全摘や骨化浮上術などで出血が予想される場合は術中回収式自己血輸血. 頚椎腫瘍に対する再建術:腫瘍の種類, 水平面での広がりによっては輸血が必要. 貯血期間が取れる場合は貯血. 無理な場合は赤血球MAPを準備する. 大量出血が予想される場合には新鮮凍結血漿や血小板等も準備する. 胸椎後方除圧術:胸髄腫瘍摘出術や単椎間除圧は輸血不要. 靭帯骨化症などで多椎間の除圧が必要な場合は術中回収式自己血輸血. 胸椎後方固定術:側彎症の矯正固定術では術前貯血と術中回収式自己血輸血の組み合わせが有効. 症例により術後回収の併用も考慮. 転移性脊椎腫瘍では貯血期間がない場合が多く, 術前血液希釈式白己血輸血を考慮. 同種血や新鮮凍結血漿の準備も必要な場合が多い. 胸椎前方固定術:椎体破裂骨折などで輸血を要する. 貯血可能であれば貯血を行い, 術中回収を併用. 腰椎後方除圧:椎間数が少なければ輸血不要る. 広範囲の除圧術では輸血が必要となる場合があり, 術中回収式自己血輸血が最適. 腰椎後方固定術:多くの症例で術中回収式自己盈輸血. 多椎間固定術では貯血式も併用. 【結語】術式, 術前期間などを検討し, 各種の自己血輸血をうまく適応することが重要である. |
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ISSN: | 0546-1448 |