4型胃癌類似所見を呈した乳癌による転移性胃腫瘍の3例

「抄録」「緒言」 : 転移性胃腫瘍は全胃腫瘍のうち0.3%と比較的稀である. 転移性胃腫瘍の原因として, 乳癌は悪性黒色腫と並び多く, 乳癌症例では剖検例も含めると2~18%に胃転移を認められている. 上部消化管内視鏡 (EGD) 所見は4型進行癌類似が最多とされている. 生検ではHE染色のみでの診断は困難で, GATA3等の乳癌マーカーおよび原発胃癌特異的マーカーとされるHNF4A等による免疫組織学的検討が鑑別に重要とされている. 乳癌による転移性胃腫瘍と診断した3例を報告する. 「症例1」 : 60歳台, 女性. 202X年9月に左乳癌 (浸潤性乳管癌) , 骨転移の診断で薬物治療が開始さ...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 49; pp. 43 - 58
Main Authors 中藤流以, 小池良和, 藤本康人, 秋山隆, 大幸一真, 二ノ宮壮広, 大澤元保, 梅垣英次, 塩谷昭子, 今村祐志, 眞部紀明, 春間賢, 田中克浩, 平成人, 塩見達志, 森谷卓也, 畠二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2023
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Summary:「抄録」「緒言」 : 転移性胃腫瘍は全胃腫瘍のうち0.3%と比較的稀である. 転移性胃腫瘍の原因として, 乳癌は悪性黒色腫と並び多く, 乳癌症例では剖検例も含めると2~18%に胃転移を認められている. 上部消化管内視鏡 (EGD) 所見は4型進行癌類似が最多とされている. 生検ではHE染色のみでの診断は困難で, GATA3等の乳癌マーカーおよび原発胃癌特異的マーカーとされるHNF4A等による免疫組織学的検討が鑑別に重要とされている. 乳癌による転移性胃腫瘍と診断した3例を報告する. 「症例1」 : 60歳台, 女性. 202X年9月に左乳癌 (浸潤性乳管癌) , 骨転移の診断で薬物治療が開始された. 202X+1年9月から心窩部痛が出現しEGDの結果, 体上部に4型胃癌類似の所見が認められた. 生検で低分化~未分化腺癌, GATA3陽性, HNF4A陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 「症例2」 : 50歳台, 女性. 201X年10月に右乳癌の診断で外科的治療が行われた (浸潤性小葉癌) 後, 薬物療法が行われたが, その後胸膜, 骨転移が出現した. 保存的治療が続けられ, 201X+4年9月のPET-CTで胃壁の集積が出現した. EGDの結果, 胃体上部~中部に4型進行癌類似の所見が認められた. 生検で低分化腺癌, GATA3陽性, HNF4A陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 「症例3」 : 60歳台, 女性. 200X年7月に左乳癌の診断で, 薬物治療後, 200X年+1年11月に外科的治療が行われた (浸潤性乳管癌で一部に浸潤性小葉癌) . 200X+12年11月に肝転移と骨転移が出現し薬物治療が再開され転移は縮小した. 200X+16年5月から心窩部不快感が出現しEGDの結果, 胃穹窿部~体下部に4型進行癌類似の所見が認められた. 生検で低分化腺癌, GATA3陽性, HNF4A陰性で乳癌による転移性胃腫瘍と診断した. 「結語」 : 乳癌の転移性胃腫瘍は4型胃癌類似の所見となることがある. 乳癌既往のある症例では転移性腫瘍の可能性を考慮し, 免疫組織学的検討を行うことが重要である.
ISSN:0386-5924