多剤併用化学療法により排菌陰性化した肺Mycobacterium heckeshornense症の1例

要旨: 症例は70歳代男性. 検診の胸部X線写真で異常を認め, 血痰もあり当科を受診した. 胸部CTで左上葉に空洞影があり気管支鏡検査を施行したが確定診断できなかった. 5年間で左肺上葉の空洞影が拡大し, 両肺に結節影や粒状影が出現・増大した. 喀痰抗酸菌塗抹と培養検査で陽性となり肺Mycobacterium heckeshornense症と診断した. rifampicin (RFP), ethambutol (EB), clarithromycin (CAM)で治療を開始し排菌陰性化したが, 9カ月後に悪化し発熱や喀痰量の増加を認めた. levofloxacinやmoxifloxacin (...

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Published in結核 Vol. 97; no. 7; pp. 377 - 380
Main Authors 中村慧一, 遠藤哲史, 黒田光, 梁田啓, 鳴海圭倫, 堂下和志, 山崎泰宏, 藤田結花, 藤兼俊明, 辻忠克
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.11.2022
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Summary:要旨: 症例は70歳代男性. 検診の胸部X線写真で異常を認め, 血痰もあり当科を受診した. 胸部CTで左上葉に空洞影があり気管支鏡検査を施行したが確定診断できなかった. 5年間で左肺上葉の空洞影が拡大し, 両肺に結節影や粒状影が出現・増大した. 喀痰抗酸菌塗抹と培養検査で陽性となり肺Mycobacterium heckeshornense症と診断した. rifampicin (RFP), ethambutol (EB), clarithromycin (CAM)で治療を開始し排菌陰性化したが, 9カ月後に悪化し発熱や喀痰量の増加を認めた. levofloxacinやmoxifloxacin (MFLX)を追加すると排菌量は減少したが症状が改善しなかった. amikacin (AMK)を約1カ月間併用すると症状は改善した. 現在, RFP, EB, CAM, MFLXの投与で排菌陰性を維持している. M. heckeshornense症に対する標準治療は確立していないが, 本症例の経験からRFP, EB, CAMの3剤を基本に, 病勢に応じてフルオロキノロン系抗菌薬やAMKの併用が有効となりうることが示唆された.
ISSN:0022-9776