de novo TSC1胚細胞遺伝子変異を認め, その表現型がリンパ脈管筋腫症に限られていた結節性硬化症の一例

症例:症例は34歳の女性. 両側の気胸で発症し, 肺生検により肺リンパ脈管筋腫症と診断した. 結節性硬化症の家族歴はなく, また, 臨床的に結節性硬化症に特徴的な皮膚や神経所見は認めなかった. 30歳頃より原因不明の両側嚢胞腎と慢性腎不全のため腎臓内科に通院していたが, 気胸発症時から血液透析導入となった. その後, 気管支カルチノイドを合併し, カルチノイド末梢の右下葉閉塞性肺炎の反復と喀血により死亡した. 病理学的検討:剖検では両側腎臓は嚢胞腎であるが, 腎血管筋脂肪腫は認めなかった. 病理組織学的には腎病変はLAM細胞の浸潤, 増殖と嚢胞形成をみとめ, それによる尿細管の閉塞が多発性嚢胞...

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Published in家族性腫瘍 Vol. 4; no. 2; p. A34
Main Authors 瀬山邦明, 佐藤輝彦, 熊坂利夫, 藤井博昭, 相馬早苗, 三谷恵子, 瀬戸口靖弘, 樋野興夫, 福地義之助
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 家族性腫瘍研究会 15.05.2004
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ISSN1346-1052

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Summary:症例:症例は34歳の女性. 両側の気胸で発症し, 肺生検により肺リンパ脈管筋腫症と診断した. 結節性硬化症の家族歴はなく, また, 臨床的に結節性硬化症に特徴的な皮膚や神経所見は認めなかった. 30歳頃より原因不明の両側嚢胞腎と慢性腎不全のため腎臓内科に通院していたが, 気胸発症時から血液透析導入となった. その後, 気管支カルチノイドを合併し, カルチノイド末梢の右下葉閉塞性肺炎の反復と喀血により死亡した. 病理学的検討:剖検では両側腎臓は嚢胞腎であるが, 腎血管筋脂肪腫は認めなかった. 病理組織学的には腎病変はLAM細胞の浸潤, 増殖と嚢胞形成をみとめ, それによる尿細管の閉塞が多発性嚢胞腎の形成機序と考えられた. LAM細胞浸潤は, 肺, リンパ節, 腎, 子宮等の広範な組織に認めた. LAM細胞はER陽性, PR陽性, 少数でHMB45陽性であった. TSC遺伝子解析:TSC1遺伝子のexon 6の胚細胞遺伝子変異(Cys165(TGC)→TGA stop)を認めた. LAM細胞をmicrodissectionしてTSC1遺伝子近傍の多型性マーカーを用いたLOH解析ではD9S149, D9S1838においてLAM細胞にLOHを検出した. また, LAM細胞では野生型TSC1遺伝子が欠失し, TSC1機能が完全になくなっていることを確認した. 両親の遺伝子解析ではTSC1遺伝子のexon 6に異常はなく, また, 多型性マーカーを用いた検討では父親由来の:TSC1遺伝子にde novo mutationが生じたと考えられた. 結語:臨床的には結節性硬化症の診断基準を満たさないが, 遺伝学的にはde novo TSC1遺伝子変異による孤発性結節性硬化症であり, その表現型がLAMに限られていた症例を経験した. LAMには結節性硬化症の不全型の症例もありうる.
ISSN:1346-1052