落雷により肺・気管気管支に受傷した一例

今回我々は落雷の電撃受傷による症例を経験し, 同症例で気管・気管支の障害を気管支内視鏡下に観察し, 経過を追えたので若干の考察を加え報告する. 症例は21歳の男性. 原付きバイクで走行中に落雷を受けた, 患者の被っていたヘルメットの左前側部に直径2.5cmの穴, 着ていたTシャツの背部に同様の穴を認め, バイクのシートに直径3cmの焼け跡を認めた. 電撃は左側頭部から体幹部を通り抜けたと考えられる. このためによると思われる気管支の障害は, 粘膜の毛細血管のびまん性の怒張と微小な出血所見であった. 胸部CTでは両肺背面に強い間質性変化を認めた. 受傷直後より呼吸状態の悪化を認めたためステロイド...

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Published in気管支学 Vol. 20; no. 3; p. 305
Main Authors 菅原啓介, 山本英彦, 有村久生, 海老規之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本気管支学会 25.04.1998
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ISSN0287-2137

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Summary:今回我々は落雷の電撃受傷による症例を経験し, 同症例で気管・気管支の障害を気管支内視鏡下に観察し, 経過を追えたので若干の考察を加え報告する. 症例は21歳の男性. 原付きバイクで走行中に落雷を受けた, 患者の被っていたヘルメットの左前側部に直径2.5cmの穴, 着ていたTシャツの背部に同様の穴を認め, バイクのシートに直径3cmの焼け跡を認めた. 電撃は左側頭部から体幹部を通り抜けたと考えられる. このためによると思われる気管支の障害は, 粘膜の毛細血管のびまん性の怒張と微小な出血所見であった. 胸部CTでは両肺背面に強い間質性変化を認めた. 受傷直後より呼吸状態の悪化を認めたためステロイドパルス療法を3日間施行し, その後BDPの吸入を施行した. 経過観察の気管支内視鏡所見では毛細血管怒張の軽快を認め, 約12日後にはほとんど正常の粘膜所見を呈していた. 患者は回復し社会復帰をしている. 電撃症の気管支粘膜の変化は通電による物理的傷害と考えられるが, 病態としては気道熱傷と類似のものとも考えられる.
ISSN:0287-2137