熊本県下のHCV抗体陽性率の検討

目的)輸血による肝炎の大部分を占める非A非B型肝炎の感染防止に有効とされるHCV抗体検査が全国の血液センターで平成元年11月より開始された. 今回, 県下の献血者の陽性率を調査し, その効果, 問題点について検討報告したい. 方法及び対象)検査はHCV antibody ELISA test(Ortho社)を用い, 使用書に従って行なった. 対象者は現在までの献血者20,927名である. 成績)献血者20,927名中, 陽性者239名, 陽性率1.14%であった. 年代別では, 10代0.28%, 20代0.61%, 30代1.23%, 40代2.04%, 50代以上では2.86%となり, 性...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 36; no. 2; p. 334
Main Authors 今村由美子, 中山みゆき, 村上朋美, 続隆文, 男山順子, 福江親司, 楠本行彦, 西村要子, 山口一成, 高月清
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1990
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Summary:目的)輸血による肝炎の大部分を占める非A非B型肝炎の感染防止に有効とされるHCV抗体検査が全国の血液センターで平成元年11月より開始された. 今回, 県下の献血者の陽性率を調査し, その効果, 問題点について検討報告したい. 方法及び対象)検査はHCV antibody ELISA test(Ortho社)を用い, 使用書に従って行なった. 対象者は現在までの献血者20,927名である. 成績)献血者20,927名中, 陽性者239名, 陽性率1.14%であった. 年代別では, 10代0.28%, 20代0.61%, 30代1.23%, 40代2.04%, 50代以上では2.86%となり, 性別では男性1.28%, 女性0.96%となった. 陽性者のALT値は, 36KU以上が15.5%を占め, 25KU以上では26.8%となり, 性別ではそれぞれ, 男性20.8%, 35.1%, 女性5.9%, 11.8%であった. 又, 対象者のALT値36KU以上は22%であったが, このうちHBs抗原陽性者26%, HBs抗体陽性者1.8%, HBc抗体高力価陽性者(HBs抗原抗体陰性)0.7%, HCV抗体陽性者は81%を占めていた. 次に自己申告のあった輸血歴のある献血者(輸血後6ヵ月以上)は53例中3例(57%)が陽性であった. 地域別陽性率は現在までのところHBs抗原陽性率と同様に郡部に高く都市部に低い傾向を示した. 考察)熊本県下の陽性率は1.14%であり全国平均とほぼ同じであった. 陽性率は加令と共に上昇し平均では男性に高い傾向を示したが, 各年代別に見ると異なる傾向を示した. 今後さらに対象者をふやし疫学的調査と共に, 性差, 年令差について検討する必要があると思われる. ALT値との相関は低年令及び高年令の男性で高い傾向があり, このグループのHCV抗体陽性者から肝疾患への危険性も示唆されることより陽性者の長期の迫跡調査を行ない, 又健康な輸血歴のある献血者の陽性率が5.7%と高いことよりスクリーニング後の効果についても調査を行なっていく予定である.
ISSN:0546-1448