ステント留置後に冠動脈瘤を生じた急性心筋梗塞の1例

症例は49歳の男性. 44歳の時に感染性心内膜炎に罹患して大動脈弁置換術を受けたが, 術後経過は良好であった. 平成8年2月14日午後, 胸痛と冷汗が出現したため当科を受診した. 心電図と心臓超音波検査にて急性心筋梗塞を疑い, 緊急冠動脈造影検査を行った. 左冠動脈前下行枝#8に完全閉塞を認めたため, 引き続いてdirect PTCAを行った. 2.5mmのバルーンカテーテルを用いて一度は拡張に成功したが, 10分後の造影にて冠動脈解離のため再閉塞を繰り返したので, 同部位に3mmのPalmaz-Schatzステントを挿入し再灌流に成功した. 1ヵ月後(3月14日)の造影にてステント留置部に再...

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Published in心臓 Vol. 29; no. 10; pp. 823 - 827
Main Authors 柴田哲男, 山田道治, 松井義親, 塩津初壽, 保浦賢三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.10.1997
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Summary:症例は49歳の男性. 44歳の時に感染性心内膜炎に罹患して大動脈弁置換術を受けたが, 術後経過は良好であった. 平成8年2月14日午後, 胸痛と冷汗が出現したため当科を受診した. 心電図と心臓超音波検査にて急性心筋梗塞を疑い, 緊急冠動脈造影検査を行った. 左冠動脈前下行枝#8に完全閉塞を認めたため, 引き続いてdirect PTCAを行った. 2.5mmのバルーンカテーテルを用いて一度は拡張に成功したが, 10分後の造影にて冠動脈解離のため再閉塞を繰り返したので, 同部位に3mmのPalmaz-Schatzステントを挿入し再灌流に成功した. 1ヵ月後(3月14日)の造影にてステント留置部に再狭窄とステントの末梢側約5mmの部位に正常血管径の2倍(直径5mm)の冠動脈瘤を認めた. 狭心症状がなく, 冠動脈瘤の大きさも血管径の2倍であったので, 抗凝固療法を継続しながら慎重に経過を追うことにした. 3ヵ月後(6月15日)の再造影では左冠動脈前下行枝はステント留置部から再閉塞し, 右冠動脈より左冠動脈前下行枝への側副血行路は認めたが冠動脈瘤は造影されなかった. 左室の壁運動は良好であったので, このまま薬物治療を続けることとした. 冠動脈瘤が生じた原因として, 血管径より大きめのステントやバルーンカテーテルによる拡張を行ったため, 血管壁が解離し脆弱化したことや, ワーファリン投与による凝固能低下が考えられた.
ISSN:0586-4488