CTとMRIによる内耳の画像診断―人工内耳適応診断を中心として

「I はじめに」 側頭骨のX線診断については, 従来, 多軌道断層や高分解能CTにより詳細に解析されてきた. しかし, これらの方法で描出される内耳の構造は基本的に骨迷路であり, その形態異常や骨破壊, 骨化の有無については診断可能であったものの, 内耳がリンパ液で満たされているか, 軟部組織で充塞されているかというレベルでの病変診断はX線診断では困難であり, 側頭骨病理検索を待たねば不可能であった. しかし最近, 内耳性高度感音難聴に対して人工内耳という画期的な治療法が出現し, その症例が増えるにつれて, CTでは骨化がないと診断されたにもかかわらず, 手術時には蝸牛内が軟部組織で閉塞されて...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 95; no. 6; pp. 817 - 957
Main Authors 熊川孝三, 武田英彦, 武藤奈緒子, 宮川晃一, 湯川久美子, 舩坂宗太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.06.1992
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ISSN0030-6622

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Summary:「I はじめに」 側頭骨のX線診断については, 従来, 多軌道断層や高分解能CTにより詳細に解析されてきた. しかし, これらの方法で描出される内耳の構造は基本的に骨迷路であり, その形態異常や骨破壊, 骨化の有無については診断可能であったものの, 内耳がリンパ液で満たされているか, 軟部組織で充塞されているかというレベルでの病変診断はX線診断では困難であり, 側頭骨病理検索を待たねば不可能であった. しかし最近, 内耳性高度感音難聴に対して人工内耳という画期的な治療法が出現し, その症例が増えるにつれて, CTでは骨化がないと診断されたにもかかわらず, 手術時には蝸牛内が軟部組織で閉塞されている症例にしばしば遭遇するようになった. この問題の解決を目的として, 筆者らは1987年よりMRIによる内耳の画像診断を試みてきた. その結果MRIのT2強調画像によって内耳のリンパ液信号を描出することが可能であり, MRIが人工内耳の適応決定上, 有用な検査法となることを報告した1)~4).
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