冠動脈バイパス術後の横隔膜ヘルニア嵌頓により急性下壁心筋梗塞を発症した1例

《Abstract》症例は60代, 男性. 5カ月前に不安定狭心症(冠動脈3枝病変)に対して左内胸動脈・大伏在静脈・右胃大網動脈を使用した冠動脈バイパス術を施行された. 術後の冠動脈CT検査ではいずれのグラフトも開存していることを確認され, 以降は特に症状なく経過していた. 術後5カ月で上腹部痛を主訴に前医を受診し, 横隔膜ヘルニアと診断され入院となったが, 翌朝にかけて心電図変化や経時的な心筋逸脱酵素の上昇を認めたことから急性冠症候群の併発が疑われ当院へ紹介搬送となった. CT検査では胃大網動脈グラフトは血流が保たれていると想定されたことから, 緊急開腹術を施行し腸管嵌頓解除を優先した. 術...

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Published in心臓 Vol. 56; no. 9; pp. 885 - 890
Main Authors 小幡谷悠人, 蔵下元気, 三宅祐一, 大原美奈子, 石澤真, 石川かおり, 村上和司, 野間貴久, 山下洋一, 堀井泰浩, 南野哲男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.09.2024
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ISSN0586-4488

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Summary:《Abstract》症例は60代, 男性. 5カ月前に不安定狭心症(冠動脈3枝病変)に対して左内胸動脈・大伏在静脈・右胃大網動脈を使用した冠動脈バイパス術を施行された. 術後の冠動脈CT検査ではいずれのグラフトも開存していることを確認され, 以降は特に症状なく経過していた. 術後5カ月で上腹部痛を主訴に前医を受診し, 横隔膜ヘルニアと診断され入院となったが, 翌朝にかけて心電図変化や経時的な心筋逸脱酵素の上昇を認めたことから急性冠症候群の併発が疑われ当院へ紹介搬送となった. CT検査では胃大網動脈グラフトは血流が保たれていると想定されたことから, 緊急開腹術を施行し腸管嵌頓解除を優先した. 術野で胃大網動脈の血流は維持されていることを確認したため, 冠動脈に対しては介入せず保存的に経過観察し, 心筋梗塞後の合併症なく第7病日に自宅退院した. 糖尿病を合併する多枝病変においては血行再建として冠動脈バイパス術が推奨され, 右冠動脈病変には同側胃大網動脈が使用される例も多い. 術後の横隔膜ヘルニア発症は稀であり, また心筋梗塞を併発した報告は本症例が初である. 冠動脈バイパス術後の腹部症状においては横隔膜ヘルニアの発症および心血管イベントの併発に留意する必要がある.
ISSN:0586-4488