抗HLA抗体を複数保有しHLA適合血小板が得られない患者へ大量の血小板を輸血した症例について

【目的】頻回に血小板輸血を受ける血液疾患の患者が同種抗体を産生することは, その後の輸血効果に大きな影響を及ぼすことになる. 我々は, 急性骨髄性白血病患者において広範囲な反応性を示すHLA抗体が産生し, 血小板輸血に不応状態になったが, 自己と同型のHLA適合血小板が得られないので, 連日, 大量のランダムと高単位の血小板輸血を実施し, 長期の不応状態から脱した症例を経験したので報告する. 【経過】患者は, 19才, 男性, 88年にAMLと診断され, 入退院とともに血小板輸血を繰り返し受けた. 92年8月に髄外中枢再発の治療の後, 汎血球減少となり1日平均25単位の血小板輸血をランダムと高...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 2; p. 505
Main Authors 松田仁志, 高橋博之, 石田はるみ, 工藤善範, 鈴木明, 成田香魚子, 伊藤経夫, 田村眞, 大井龍司, 小泉善嗣, 今泉益栄, 多田啓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.05.1993
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Summary:【目的】頻回に血小板輸血を受ける血液疾患の患者が同種抗体を産生することは, その後の輸血効果に大きな影響を及ぼすことになる. 我々は, 急性骨髄性白血病患者において広範囲な反応性を示すHLA抗体が産生し, 血小板輸血に不応状態になったが, 自己と同型のHLA適合血小板が得られないので, 連日, 大量のランダムと高単位の血小板輸血を実施し, 長期の不応状態から脱した症例を経験したので報告する. 【経過】患者は, 19才, 男性, 88年にAMLと診断され, 入退院とともに血小板輸血を繰り返し受けた. 92年8月に髄外中枢再発の治療の後, 汎血球減少となり1日平均25単位の血小板輸血をランダムと高単位の両方で行なったが, 2万/μl以下の血小板値が約2週間続いた. その後, 輸血後翌日の血小板値の上昇を見ることができた. その間, 消化管出血が発見され, 計50単位の赤血球輸血を行なっている. 患者血清中には, 広範な反応性を示す特異性を決められない抗HLA抗体が複数存在し, その特異性を同定できなかったことと, 患者のHLA型が比較的に稀なものであったことから, HLA適合血小板が入手できなかった. 血小板抗体の存在については, 血小板のHLA抗原を処理しきれず, 特定できなかった. 血小板数が回復した時期から半月後, 化学療法を再開したところ, 前回と同様, 血小板輸血の無効状態が約3週間続いた. 1日平均30単位の血小板輸血を行ない, 20日の後, 血小板値が20万/μlまで回復し, 危機状態を脱出し, 現在に到っている. 【考察】複数の抗HLA抗体が存在し, 適合血小板が輸血できなかったことが, 血小板輸血の効果が得られない要因と考える. 一日30単位もの血小板輸血量は, 消化管出血がある以上, 腎出血の予防のためにも, やむをえない処置であったと考える. 2-3週間続いた不応状態の後の血小板数の上昇は, 化学療法の休止による骨髄造血能の回復によるものであろう. 今後の治療には, 血液濾過法を用いて同種抗体を除去した後, 治療継続を計画している. 血小板大量投与の是非に関し, 識者の意見を伺いたい.
ISSN:0546-1448