THA後9週目に頸部縦割れ骨折を起こした1例
【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA), 人工骨頭置換術後の大腿骨ステム周辺骨折は比較的まれな骨折である. 今回セメントレスTHA後9週で頸部縦割れ骨折を起こした症例を経験したので, インプラントの固定性の問題とあわせて報告する. 【症例】51歳, 女性. RAにてプレドニゾロン5mg内服開始. 開始後5カ月で右股関節痛出現. X線写真で骨頭の圧潰認め, 壊死を生じていた. 圧潰が進行したためセメントレスTHA施行. ステムの髄腔占拠率は近位86.1%, 中央92.9%, 遠位90.9%である. 術後2週より1本杖歩行訓練開始. 術後5週で特に問題なく退院となる. 経過良好で杖なし歩行中...
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Published in | 整形外科と災害外科 Vol. 50; no. 4; p. 1189 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本整形・災害外科学会
25.09.2001
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ISSN | 0037-1033 |
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Summary: | 【はじめに】人工股関節全置換術(以下THA), 人工骨頭置換術後の大腿骨ステム周辺骨折は比較的まれな骨折である. 今回セメントレスTHA後9週で頸部縦割れ骨折を起こした症例を経験したので, インプラントの固定性の問題とあわせて報告する. 【症例】51歳, 女性. RAにてプレドニゾロン5mg内服開始. 開始後5カ月で右股関節痛出現. X線写真で骨頭の圧潰認め, 壊死を生じていた. 圧潰が進行したためセメントレスTHA施行. ステムの髄腔占拠率は近位86.1%, 中央92.9%, 遠位90.9%である. 術後2週より1本杖歩行訓練開始. 術後5週で特に問題なく退院となる. 経過良好で杖なし歩行中であったが術後9週バスの乗降など活動的に仕事をした翌日より右大腿に疼痛出現. 歩行困難となる. X線写真で頸部縦割れ骨折Johansson分類type 1とsinking 22mmを認めた. Doll-Miles cable 2本で固定. 固定後4週でsinking 6mmを生じていたが, 術後5カ月の現在までにsinkingの進行はない. 【考察】セメントレスTHA, 骨頭置換後のステムの安定性を保つには良好な適合性と髄腔占拠率が重要で, このことがlooseningとステム周辺骨折の防止になるとされている. 以上を考慮し, 当院の症例について検討した. 対象は1997年4月から2000年5月までに変股症, 骨頭壊死, 頸部骨折など33股. セメントレスTHA 14股, 骨頭置換19股, 平均年齢74歳, 平均観察期間6カ月. これらの症例は可能な限り2週以内に荷重を開始している. looseningの有無, ステムの髄腔占拠率を検討した. セメントレスTHA 1症例に3mm以上のsinkingを認めた. 平均髄腔占拠率はX線前後像で近位84.8%, 中央81.7%, 遠位81.8%と良好であった. sinkingとの明らかな関係はなかった. 本症例はJohansson分類type 1であるが, type 1の多くは斜骨折であり, 今回のような縦割れは文献的渉猟した範囲では報告がない. 【まとめ】縦割れ骨折の原因としては, ステム挿入時の骨折, ステムの形状(近位部での内側皮質骨への適合性と髄腔占拠率), 早期荷重, sinkingなどが考えられるが明らかにできなかった. |
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ISSN: | 0037-1033 |