非放射性DNAプローブによるStreptococcus mutansの同定法

鶴蝕の主要原因菌と考えられているS.mutansの同定法としては, 酵素活性, および糖発酵試験などの生化学試験が常用されている. これらの方法は, 得られる結果がしばしば曖昧で, 信頼性に乏しい. 近年, 非放射性のDNAプローブを用いた検出, 同定法が報告されてきている. この方法は, 遺伝子レベルで目的の細菌を特異的に検出, 同定でき, 信頼性に優れている上に, 放射能汚染の心配がなく安全である. そこで, 我々は, S.mutans Ingbritt株のデキストラナーゼ遺伝子(dexA)をプローブとして, S.mutansの同定法の開発を試みた. [方法] DNAプローブには, dex...

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Published in昭和歯学会雑誌 Vol. 17; no. 1; pp. 83 - 84
Main Authors 伊田博, 佐々竜二, 五十嵐武, 後藤延一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学・昭和歯学会 31.03.1997
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Summary:鶴蝕の主要原因菌と考えられているS.mutansの同定法としては, 酵素活性, および糖発酵試験などの生化学試験が常用されている. これらの方法は, 得られる結果がしばしば曖昧で, 信頼性に乏しい. 近年, 非放射性のDNAプローブを用いた検出, 同定法が報告されてきている. この方法は, 遺伝子レベルで目的の細菌を特異的に検出, 同定でき, 信頼性に優れている上に, 放射能汚染の心配がなく安全である. そこで, 我々は, S.mutans Ingbritt株のデキストラナーゼ遺伝子(dexA)をプローブとして, S.mutansの同定法の開発を試みた. [方法] DNAプローブには, dexA領域の1.2kbのSac I-Eco RI断片を用いた. 染色体DNAは, ミュータンス・レンサ球菌群5菌種13株から, 塩化セシウム密度勾配遠心法により精製した. DNA標識, およびサザンハイブリダイゼーションは, DIG labeling and Detection kit Iを用いた. [結果]制限酵素Pst I消化した染色体DNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離し, DIG-dexAプローブとサザンハイブリダイゼーションを行うと, S.mutansのみが, 特異的に検出され, その他のミュータンス・レンサ球菌4菌種7株, および近縁菌株11菌種14株とは, ハイブリッドを形成しなかった. また, このプローブでは, S.mutansの血清型c, e, fを区別することは出来なかった. S. mutans Ingbritt株の染色体DNAを用いたドットハイブリダイゼーションによる検出感度測定では, 1ngの標的DNAが検出可能であることが分かった. [結論]以上の結果から, ここで作製したDIG-dexAプローブによるサザンハイブリダイゼーションは, その特異性, および検出感度において, S.mutansの同定に有用であると思われる.
ISSN:0285-922X