急性A型大動脈解離手術時に頸部rSO2測定が有用であった1症例

「要旨」急性A型大動脈解離における脳灌流障害合併例は極めて予後不良であり早期発見, 早期再灌流が重要である. 脳血流の簡易測定として局所酸素飽和度 (regional cerebral oxygen saturation : rSO2) 測定を用いることがあるが, 前額部の局所測定が主流である. 我々は, これまでに前額部rSO2値に左右差のない患者においても術後後頭葉に大きな脳梗塞を合併した経験から頸部rSO2測定を施行している. 今回, 術前に前額部rSO2の左右差はないが, 人工心肺確立後の冷却中に右頸部rSO2の低下を来たしたため, 上行大動脈送血を追加し複数送血することによりrSO2...

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Published in体外循環技術 Vol. 45; no. 2; pp. 124 - 127
Main Authors 加納寛也, 三里卓也, 当麻遼, 柴田康成, 守田佳保里, 大城秀太, 大塚健太, 森島毅, 戸部智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.06.2018
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ISSN0912-2664

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Summary:「要旨」急性A型大動脈解離における脳灌流障害合併例は極めて予後不良であり早期発見, 早期再灌流が重要である. 脳血流の簡易測定として局所酸素飽和度 (regional cerebral oxygen saturation : rSO2) 測定を用いることがあるが, 前額部の局所測定が主流である. 我々は, これまでに前額部rSO2値に左右差のない患者においても術後後頭葉に大きな脳梗塞を合併した経験から頸部rSO2測定を施行している. 今回, 術前に前額部rSO2の左右差はないが, 人工心肺確立後の冷却中に右頸部rSO2の低下を来たしたため, 上行大動脈送血を追加し複数送血することによりrSO2の改善を認め術後脳梗塞の合併なく経過した. 急性A型大動脈解離の手術において, 脳血流障害を認める症例では前額部rSO2で左右差を認めなくとも頸部rSO2で左右差を認めることは, 頸動脈の血流の低下を意味する. 脳血流障害を判断する上で重要なのは進行性意識障害のみならず, 造影CT, 頸動脈エコーと合わせて前額部rSO2測定に加え, 頸部rSO2の測定は有用であることが示唆された.
ISSN:0912-2664