小脳の学習と運動・認知機能

要旨 : 小脳は日常生活の中で運動の内部モデルを学習により獲得し, それを用いて予測に基づく運動の制御を行う. 反射の眼球運動の適応を用いた研究の結果は, 小脳皮質の出力細胞であるプルキンエ細胞のシナプス伝達可塑性(長期抑圧や長期増強)が原因となって運動の学習が生じ, さらに学習が繰り返されると, 新たに小脳皮質の出力先の小脳核に長期の運動の記憶が形成されることを示唆する. 小脳によるこのような学習と記憶のメカニズムは, 反射の制御のみならず, ヒトでは大脳-小脳ループを介して, 複雑な随意運動や言語をはじめとする認知機構にも用いられると示唆される. 「はじめに」 脳の特徴は, 経験に基づき学...

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Published in運動障害 Vol. 23; no. 1; pp. 31 - 39
Main Authors 永雄総一, 本多武尊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本運動障害研究会 15.07.2013
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ISSN0917-5601

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Summary:要旨 : 小脳は日常生活の中で運動の内部モデルを学習により獲得し, それを用いて予測に基づく運動の制御を行う. 反射の眼球運動の適応を用いた研究の結果は, 小脳皮質の出力細胞であるプルキンエ細胞のシナプス伝達可塑性(長期抑圧や長期増強)が原因となって運動の学習が生じ, さらに学習が繰り返されると, 新たに小脳皮質の出力先の小脳核に長期の運動の記憶が形成されることを示唆する. 小脳によるこのような学習と記憶のメカニズムは, 反射の制御のみならず, ヒトでは大脳-小脳ループを介して, 複雑な随意運動や言語をはじめとする認知機構にも用いられると示唆される. 「はじめに」 脳の特徴は, 経験に基づき学習することと, 学習の結果を記憶して行動に利用することである. 小脳と海馬はそれぞれ運動記憶と陳述記憶の獲得と維持に重要な役割を演じており, そのもとになるメカニズムが明らかにされてきている. 本稿では小脳による運動記憶の形成のメカニズムについての最新の知見を解説し, 小脳の学習と認知機能との関わりを, 言語を例として紹介する.
ISSN:0917-5601