東日本大震災を経験したSOCの高い高齢者の心の拠り所

【目的】首尾一貫感覚(Sense of Coherence:SOC)は, 高齢者の心身の健康と関連がある重要な能力であるが, これを高めている精神的要因については必ずしも明らかでなかった. そこでこの研究では被災地在住のデイサービス利用者を対象として, SOC得点が高い高齢者の心の拠り所を明らかにし, 今後の支援方法を検討するための一助とした. 【方法】1. 対象:東日本大震災被災地域に震災前から居住しているデイサービスの利用者32名(平均年齢85.4±6.6). 2. 調査内容:1)健康保持能力としてのSOC:SOC13項目調査を実施し, 総得点の中央値で高低2群に分け, 高群の内聞き取り調...

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Published in心身健康科学 Vol. 11; no. 2; p. 65
Main Authors 小林美奈子, 大東俊一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心身健康科学会 01.09.2015
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Summary:【目的】首尾一貫感覚(Sense of Coherence:SOC)は, 高齢者の心身の健康と関連がある重要な能力であるが, これを高めている精神的要因については必ずしも明らかでなかった. そこでこの研究では被災地在住のデイサービス利用者を対象として, SOC得点が高い高齢者の心の拠り所を明らかにし, 今後の支援方法を検討するための一助とした. 【方法】1. 対象:東日本大震災被災地域に震災前から居住しているデイサービスの利用者32名(平均年齢85.4±6.6). 2. 調査内容:1)健康保持能力としてのSOC:SOC13項目調査を実施し, 総得点の中央値で高低2群に分け, 高群の内聞き取り調査が可能であった女性5名に面接調査を実施した. 2)心の拠り所:「困難な状況をどのように克服してきたか」「心の拠り所として信じているものは何か」等について半構造化面接を実施し, 会話内容から心の拠り所の部分を抜き出し, 高いSOCを保持している要因について質的帰納的分析を行った. 【結果】SOC総得点の平均値は64.8±10.1で, SOC高群では73.4±4.4, 低群では56.3±7.7であった. 聞き取り調査では, 心の拠り所として「血縁者との繋がりの実感」「祖先との繋がりの実感」「友人知人との繋がりの実感」「自然との繋がりの実感」が抽出された. また, 共通な人生経験の特徴として「一貫した困難克服の経験」「楽観的な思考」が抽出された. 【考察】他者との繋がりの実感や楽観的思考はSOCを高め, その結果高齢者の心身の健康も高める可能性がある 【結論】SOCが高い被災地の高齢者は祖先祭祀等を通じ, 先祖や血縁者, 友人・知人や自然との繋がりを実感している. 過去の人生において一貫して困難状況を克服し生き抜いたという成功体験は楽観的な思考へと導き, SOCを高めていると思われる. 【倫理審査申請承認機関】亀田医療大学(承認番号2013・A・OlO)
ISSN:1882-6881