乳癌に対する化学療法中に発症したG-CSF製剤による薬剤性血管炎の1例

《Abstract》症例は67歳女性. 近医にて乳癌を指摘され抗癌剤投与を開始されたが, その経過中にWBC, CRPの上昇があり, 精査目的に施行した単純CTにて左胸水, 左鎖骨下動脈周囲に炎症像を認めたため, 大動脈炎疑いとして当院に紹介受診. 初診時CRP 11.72mg/dLと高値であり, 造影CTにて左鎖骨下動脈の壁肥厚および, 周囲の脂肪織濃度上昇を認めた. PET-CTでも左鎖骨下に淡い集積を認め, 精査目的に入院. 各種検査では原因が特定できなかったが, 治療介入なくCRPは低下し, 前医にて乳癌に対する化学療法投与後に発熱性好中球減少症予防のためのG-CSF製剤投与が行われて...

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Published in心臓 Vol. 55; no. 12; pp. 1168 - 1173
Main Authors 岩本真佳, 寺中若菜, 片平征伸, 中谷和弘, 光定伸浩, 安賀裕二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.12.2023
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ISSN0586-4488

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Summary:《Abstract》症例は67歳女性. 近医にて乳癌を指摘され抗癌剤投与を開始されたが, その経過中にWBC, CRPの上昇があり, 精査目的に施行した単純CTにて左胸水, 左鎖骨下動脈周囲に炎症像を認めたため, 大動脈炎疑いとして当院に紹介受診. 初診時CRP 11.72mg/dLと高値であり, 造影CTにて左鎖骨下動脈の壁肥厚および, 周囲の脂肪織濃度上昇を認めた. PET-CTでも左鎖骨下に淡い集積を認め, 精査目的に入院. 各種検査では原因が特定できなかったが, 治療介入なくCRPは低下し, 前医にて乳癌に対する化学療法投与後に発熱性好中球減少症予防のためのG-CSF製剤投与が行われていた経緯から, G-CSF製剤による薬剤性血管炎と診断した. 血管炎の原因として様々な病態が知られているが, G-CSF製剤による薬剤性血管炎も念頭に置く必要があると考えられ, 無症状でありながら画像検査や詳細な病歴聴取により早期に診断に至った本例は示唆に富むと考え報告する.
ISSN:0586-4488