癌性腹膜炎との鑑別に苦慮したT-SPOT.TB陰性の結核性腹膜炎の1例

「要旨」: 癌性腹膜炎との鑑別に苦慮したT-SPOT.TB陰性の結核性腹膜炎について報告する. 症例は49歳男性. 腹痛を主訴に受診し, 胸腹部CTで縦隔リンパ節腫大, びまん性腹膜肥厚, 腹水を認め, PET/CTでも同部位への集積を認めた. 肺野には肺結核を示唆する粒状影や浸潤影は認めず, T-SPOTが陰性であったため癌性腹膜炎が疑われた. 原発巣検索目的で施行した気管支鏡検査では, 気管分岐部と右主気管支に白色隆起病変を認め, 下部消化管内視鏡検査では回腸末端に潰瘍を認めた. 回腸末端の生検検査で抗酸菌塗抹検査が陽性となり, 腸管生検検査, 腸管洗浄液でMycobacterium tu...

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Published in結核 Vol. 99; no. 5; pp. 139 - 143
Main Authors 森口修平, 花田豪郎, 村瀬享子, 中濱洋, 宮本篤, 玉岡明洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.07.2024
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」: 癌性腹膜炎との鑑別に苦慮したT-SPOT.TB陰性の結核性腹膜炎について報告する. 症例は49歳男性. 腹痛を主訴に受診し, 胸腹部CTで縦隔リンパ節腫大, びまん性腹膜肥厚, 腹水を認め, PET/CTでも同部位への集積を認めた. 肺野には肺結核を示唆する粒状影や浸潤影は認めず, T-SPOTが陰性であったため癌性腹膜炎が疑われた. 原発巣検索目的で施行した気管支鏡検査では, 気管分岐部と右主気管支に白色隆起病変を認め, 下部消化管内視鏡検査では回腸末端に潰瘍を認めた. 回腸末端の生検検査で抗酸菌塗抹検査が陽性となり, 腸管生検検査, 腸管洗浄液でMycobacterium tuberculosisが陽性となったため, 気管支結核, 結核性リンパ節炎, 腸結核, 結核性腹膜炎と診断した. イソニアジド, リファンピシン, エタンブトール, ピラジナミドで加療を行い, すべての病変は改善した. 結核性腹膜炎は診断が難しい疾患であり, 本症例のようにT-SPOT陰性であっても同疾患を念頭に診療を行っていくことが重要である.
ISSN:0022-9776