急激な腎盂内血腫の増大から腎摘出に至った腎浸潤性尿路上皮癌の一例
「抄録」: 腎浸潤性尿路上皮癌は, 腎盂粘膜面には腫瘤が指摘できないにも関わらず, 腎実質内に尿路上皮癌が浸潤する予後不良な悪性疾患である. 症例は左腎萎縮のある85歳, 女性. X-2年2月より間欠的な肉眼的血尿を自覚し, 右腎盂内血腫による腎後性腎不全を繰り返していた. しかし, 単純CT, 逆行性腎盂造影, 複数回の尿細胞診で悪性を疑う所見に乏しく, 高齢であることや併存疾患などの背景から尿管ステントの定期交換にて経過観察となっていた. X年4月, 右腎盂拡張と腎盂内血腫に発熱を伴ったため, 前医で複雑性腎盂腎炎として加療するも, うっ血性心不全を来し全身管理目的に当院に転院となった....
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Published in | 西日本泌尿器科 Vol. 86; no. 3; pp. 130 - 135 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本泌尿器科学会
01.02.2024
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ISSN | 0029-0726 |
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Summary: | 「抄録」: 腎浸潤性尿路上皮癌は, 腎盂粘膜面には腫瘤が指摘できないにも関わらず, 腎実質内に尿路上皮癌が浸潤する予後不良な悪性疾患である. 症例は左腎萎縮のある85歳, 女性. X-2年2月より間欠的な肉眼的血尿を自覚し, 右腎盂内血腫による腎後性腎不全を繰り返していた. しかし, 単純CT, 逆行性腎盂造影, 複数回の尿細胞診で悪性を疑う所見に乏しく, 高齢であることや併存疾患などの背景から尿管ステントの定期交換にて経過観察となっていた. X年4月, 右腎盂拡張と腎盂内血腫に発熱を伴ったため, 前医で複雑性腎盂腎炎として加療するも, うっ血性心不全を来し全身管理目的に当院に転院となった. 転院時には保存的加療となったが, 入院7日目に血腫の増大を認め, 貧血進行のコントロール目的に経腰的右腎摘出術を施行した. 摘出腎下極の実質内には乳白色の硬結を触れ, 尿路上皮癌の被膜外までの浸潤が確認された. しかし, 腎盂粘膜には腫瘤の形成は指摘できず, 腎浸潤性尿路上皮癌の特徴に合致する症例であった. 術後経過は良好で, 透析導入なく退院となった. 術後7カ月で肺転移が出現し, best supportive careへ移行した. 腎浸潤性尿路上皮癌は稀な疾患ではあるが, 画像検査や尿細胞診で悪性を疑う所見に乏しい尿路悪性疾患として念頭に置いておく必要がある. |
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ISSN: | 0029-0726 |