ラット下歯槽神経における神経因性疼痛に関する神経病理組織学的研究
「緒言」疼痛は患者の病態把握の指標として重要であるばかりでなく, その生活の質を高めるためにも非常に重要であることが理解されつつある. しかし, 末梢神経損傷後, その支配領域に数日から数週間にわたり, 触覚過敏や痛覚過敏と呼ばれる神経因性感覚異常が惹起されることが知られている. これらの発現要因には, 炎症性物質の影響や, 神経の慢性圧迫といったものがある. また, 三叉神経領域においても, 歯科治療, 顎顔面手術や顔面外傷による炎症や, 瘢痕組織による三叉神経の圧迫により, 神経因性痛覚異常が惹起されることが報告されている1-4). 神経因性の感覚異常の発現機序についてはBennet(19...
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Published in | 九州歯科学会雑誌 Vol. 57; no. 1/2; pp. 14 - 24 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州歯科学会
25.04.2003
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Summary: | 「緒言」疼痛は患者の病態把握の指標として重要であるばかりでなく, その生活の質を高めるためにも非常に重要であることが理解されつつある. しかし, 末梢神経損傷後, その支配領域に数日から数週間にわたり, 触覚過敏や痛覚過敏と呼ばれる神経因性感覚異常が惹起されることが知られている. これらの発現要因には, 炎症性物質の影響や, 神経の慢性圧迫といったものがある. また, 三叉神経領域においても, 歯科治療, 顎顔面手術や顔面外傷による炎症や, 瘢痕組織による三叉神経の圧迫により, 神経因性痛覚異常が惹起されることが報告されている1-4). 神経因性の感覚異常の発現機序についてはBennet(1988)5)らがラットの坐骨神経結紮による不完全神経損傷モデルを作製し, 術後の疼痛閾値の低下を報告して以来, 多くの研究が行われてきた6-8). 神経化学的には, 末梢神経損傷による求心性刺激情報が繰り返し脊髄後角に伝達され, 痛みの伝達物質であるglutamateやsubstancePが持続的に放出されると, シナプス後細胞のN-methyl-D-asparate受容体が活性化され細胞内Ca2+濃度が増加し連鎖する生化的学反応により脊髄シナプス伝達が可塑的状態になることが主たる機序として判明してきている. |
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ISSN: | 0368-6833 |