Helicobacter pyloriがんタンパク質CagAが引き起こす胃がん発症のメカニズム
「はじめに」cagA遺伝子を保有するHelicobacter pylori(H. pylori)の胃粘膜慢性感染は胃がんの発症と密接にかかわる. cagA産物であるCagAは現在唯一知られる細菌由来のがんタンパク質であり, H. pyloriが保有するIV型分泌機構を介して胃粘膜の上皮細胞内に注入され, 多段階からなる胃発がん過程を促進する. 本稿では, CagAが発揮する胃発がん促進活性とその分子機序について, 誌面の制約上, われわれが明らかにしてきた成果を中心に概説する. 「がんタンパク質CagAの構造的特徴」CagAタンパク質は約135kDaの分子量をもち, 全体の約70%を占めるN端...
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Published in | 日本ヘリコバクター学会誌 Vol. 26; no. 1; pp. 12 - 17 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ヘリコバクター学会
15.05.2024
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ISSN | 2187-8005 2187-8005 |
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Summary: | 「はじめに」cagA遺伝子を保有するHelicobacter pylori(H. pylori)の胃粘膜慢性感染は胃がんの発症と密接にかかわる. cagA産物であるCagAは現在唯一知られる細菌由来のがんタンパク質であり, H. pyloriが保有するIV型分泌機構を介して胃粘膜の上皮細胞内に注入され, 多段階からなる胃発がん過程を促進する. 本稿では, CagAが発揮する胃発がん促進活性とその分子機序について, 誌面の制約上, われわれが明らかにしてきた成果を中心に概説する. 「がんタンパク質CagAの構造的特徴」CagAタンパク質は約135kDaの分子量をもち, 全体の約70%を占めるN端側の構造をとる領域と, 決まった構造をもたないC末端の天然変性尾部から構成される. 胃上皮細胞内に注入されたCagAは, ヒトのSRCファミリーキナーゼおよびABLキナーゼによって, C末端尾部に存在するGlu-Pro-Ile-Tyr-Ala(EPIYA)モチーフがチロシンリン酸化を受ける. |
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ISSN: | 2187-8005 2187-8005 |