循環器疾患の成因としての炎症の意義

近年, 循環器疾患のさまざまな病態に炎症性機転が関与することが明らかとなってきました. 特に動脈硬化の発症・進展に炎症性機転が寄与することから, 動脈硬化症が炎症性疾患であるという認識が確立されました. また, 炎症は心不全や心房細動などの不整脈の病態とも深くかかわっています. 本日は冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患に焦点を絞って話を進めてまいります. 動脈硬化の発症・進展過程では, まず高血圧・糖尿病・脂質代謝異常などの危険因子により血管内皮が障害されることで血管壁に炎症が惹起されます. そしてそれが長期に続くことで血管平滑筋細胞が増殖し, 血管壁が肥厚し, 内腔が狭窄するとともにプラークが形...

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Published in心臓 Vol. 45; no. 8; pp. 1062 - 1065
Main Author 井上晃男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団・日本循環器学会 15.08.2013
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ISSN0586-4488

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Summary:近年, 循環器疾患のさまざまな病態に炎症性機転が関与することが明らかとなってきました. 特に動脈硬化の発症・進展に炎症性機転が寄与することから, 動脈硬化症が炎症性疾患であるという認識が確立されました. また, 炎症は心不全や心房細動などの不整脈の病態とも深くかかわっています. 本日は冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患に焦点を絞って話を進めてまいります. 動脈硬化の発症・進展過程では, まず高血圧・糖尿病・脂質代謝異常などの危険因子により血管内皮が障害されることで血管壁に炎症が惹起されます. そしてそれが長期に続くことで血管平滑筋細胞が増殖し, 血管壁が肥厚し, 内腔が狭窄するとともにプラークが形成され, 動脈硬化が進行します. こうした長い経過での動脈硬化進展にかかわるのは慢性炎症反応です. 一方, 急性冠症候群ではプラーク不安定化からプラーク破綻にいたる過程において, 急性炎症性機転が加わります.
ISSN:0586-4488