幼児対麻痺に対する経皮的埋め込み電極を用いた機能的電気刺激

「目的」我々は, 成人対麻痺例に対して経皮的埋め込み電極を用いたFESにより起立・歩行再建を行ってきたが, 今回乳児期に発症した幼児対麻痺例にTES,FESを施行した. 本例は, 埋め込み電極を用いたFESの世界最年少例と思われ, その結果, 問題点について述べる. 「対象」手術時年齢4歳4ヵ月, 女児で, 経過観察期間は3年8ヵ月である. 生後間もなく先天性神経芽細胞腫で対麻痺となり, わずかな自発運動を認める重度の対麻痺が残存した. 「方法」両下肢に経皮的埋め込み電極(SES114)を17本刺入し, TESを施行した. 「結果」電気刺激による反応は良好だったが, 術後10ヵ月で電極の移動6...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 37; no. 12; p. 1043
Main Authors 島田洋一, 佐藤光三, 松永俊樹, 堤祥浩, 三澤晶子, 安藤滋, 湊貴至
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.2000
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「目的」我々は, 成人対麻痺例に対して経皮的埋め込み電極を用いたFESにより起立・歩行再建を行ってきたが, 今回乳児期に発症した幼児対麻痺例にTES,FESを施行した. 本例は, 埋め込み電極を用いたFESの世界最年少例と思われ, その結果, 問題点について述べる. 「対象」手術時年齢4歳4ヵ月, 女児で, 経過観察期間は3年8ヵ月である. 生後間もなく先天性神経芽細胞腫で対麻痺となり, わずかな自発運動を認める重度の対麻痺が残存した. 「方法」両下肢に経皮的埋め込み電極(SES114)を17本刺入し, TESを施行した. 「結果」電気刺激による反応は良好だったが, 術後10ヵ月で電極の移動6本, 断線2本による反応不良を生じ, 9本の電極再刺入を行った. 反応は良好で, TESを継続しており, 筋萎縮予防, 筋肥大が得られている. また, ARGO併用で起立・歩行している. 「考察」幼児に対する埋め込み電極の使用は, 成長に伴う移動, 断線が危惧される. SES114電極は十分な伸縮性をもっており, 動物実験では成長にも十分に対処し得る可能性が示唆されていたが, 結果的に移動, 断線をみた. これを予防する手段として, 皮下でエントリーポイントへ電極を導く際に, 角度を付けすぎないこと, 膝関節周囲では屈側に十分な余裕を持たせて導くことが挙げられる. しかし, どの程度の成長まで対処できるのかは今後の課題である. しかし, 本法は, 乳幼児期対麻痺例の筋萎縮予防を確実に行える唯一の手法であり, 改良, 発展させる必要がある.
ISSN:0034-351X