神経伝達物質の変動とは

Parkinson病の脳内で減少しているドーパミンを外から補うために,血液脳関門を通過し得るドーパミンの前駆体であるL-DOPAが用いられた.およそ30年程前のことである.この補充療法が確立するにはなお10年近くを要したが,その効果があまりにも目を見張る如くであったから,神経伝達物質の変動を調節することのすばらしさが,我々の頭から離れないし,第2のParkinson病,第2のL-DOPAを求めて,この30年間に神経伝達物質研究が行われてきた.しかし,ヒト脳の生化学的分析にはそれなりの困難さがある.神経伝達物質毎の性質の違いなどもあって,ヒト脳で神経伝達物質の変動が意味するものを正しく評価するこ...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 80; no. 7; pp. 1148 - 1152
Main Author 金澤, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.07.1991
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Summary:Parkinson病の脳内で減少しているドーパミンを外から補うために,血液脳関門を通過し得るドーパミンの前駆体であるL-DOPAが用いられた.およそ30年程前のことである.この補充療法が確立するにはなお10年近くを要したが,その効果があまりにも目を見張る如くであったから,神経伝達物質の変動を調節することのすばらしさが,我々の頭から離れないし,第2のParkinson病,第2のL-DOPAを求めて,この30年間に神経伝達物質研究が行われてきた.しかし,ヒト脳の生化学的分析にはそれなりの困難さがある.神経伝達物質毎の性質の違いなどもあって,ヒト脳で神経伝達物質の変動が意味するものを正しく評価することが必要な時代に入っている.そこで,本小文では,私の経験からヒト脳の神経伝達物質の変動について,特に研究方法の問題点と研究結果の解釈における注意点を述べた.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.80.1148