神経疾患における遅発性神経細胞障害に対する脳保護・再生療法

ラット前脳虚血モデルにおいて, 非致死的脳虚血をあらかじめ負荷することで致死的脳虚血後の海馬の遅発性神経細胞死が抑制されることが観察され, 虚血耐性現象と呼ばれる. 従来のラット前脳虚血モデルにおいては, 虚血侵襲を総頸動脈閉塞時間で評価することが一般的であったが, 同モデルのひとつである4血管閉塞モデルを用いて両側海馬における脱分極時間による虚血侵襲の評価を行ったところ, 8~9分以上の脱分極で海馬における遅発性神経細胞死が誘導され(致死的虚血), 2~3分の脱分極で十分な虚血耐性が獲得されること(非致死的虚血)が明らかとなった. 脳虚血が発生すると神経細胞膜の脱分極が生じることを虚血侵襲の...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 5; no. 4; p. 241
Main Author 上田雅之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 01.10.2009
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ISSN1349-8975

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Summary:ラット前脳虚血モデルにおいて, 非致死的脳虚血をあらかじめ負荷することで致死的脳虚血後の海馬の遅発性神経細胞死が抑制されることが観察され, 虚血耐性現象と呼ばれる. 従来のラット前脳虚血モデルにおいては, 虚血侵襲を総頸動脈閉塞時間で評価することが一般的であったが, 同モデルのひとつである4血管閉塞モデルを用いて両側海馬における脱分極時間による虚血侵襲の評価を行ったところ, 8~9分以上の脱分極で海馬における遅発性神経細胞死が誘導され(致死的虚血), 2~3分の脱分極で十分な虚血耐性が獲得されること(非致死的虚血)が明らかとなった. 脳虚血が発生すると神経細胞膜の脱分極が生じることを虚血侵襲の評価に応用したものだが, 総頸動脈閉塞時間と脱分極時間は必ずしも一致しないため, 脱分極時間を用いた方が信頼性の高い実験ができると考えられ, 高精度ラット4血管閉塞モデルが確立された.
ISSN:1349-8975