当院における不適合輸血の実態とその対策

安全な輸血療法への関心が急速に高まった現在においても, 不適合輸血症例を経験する. そこで当院における過去2年間の不適合輸血症例を調査し, 実態の把握とその対策について検討したので報告する. 【方法・症例】当院における平成7年11月から平成9年10月までの過去2年間の輸血症例を対象とした. 当院はベッド数1205床, 年間の輸血回数は約14000回(平成7年:14223回), 過去2年間の不適合輸血症例はABO不適合輸血は4例, 不規則抗体保有者への不適合輸血症例は2例であった. 《 ABO 不適合輸血症例》 症例1. A3B型の患者に, 夜間医師が血液型検査を行いB型と誤判したため, B型の...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 2; p. 217
Main Authors 東谷孝徳, 川野洋之, 小川美津子, 相浦佳代子, 佐川公矯
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1998
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ISSN0546-1448

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Summary:安全な輸血療法への関心が急速に高まった現在においても, 不適合輸血症例を経験する. そこで当院における過去2年間の不適合輸血症例を調査し, 実態の把握とその対策について検討したので報告する. 【方法・症例】当院における平成7年11月から平成9年10月までの過去2年間の輸血症例を対象とした. 当院はベッド数1205床, 年間の輸血回数は約14000回(平成7年:14223回), 過去2年間の不適合輸血症例はABO不適合輸血は4例, 不規則抗体保有者への不適合輸血症例は2例であった. 《 ABO 不適合輸血症例》 症例1. A3B型の患者に, 夜間医師が血液型検査を行いB型と誤判したため, B型のMAP-2, FFP-2を各1パック輸血. 症例2. 同姓の患者が二人いたことから看護婦が誤って, A型の患者にAB型の MAP 約20mlを輸血. 症例3. 看護婦が誤って, AB型の患者にA型のMAP 10mlを輸血. 症例4. 患者の姓が似ていたため看護婦が誤って, A型の患者にO型のFFPを40ml輸血. 《不規則抗体保有者への不適合輸血》 症例1. 不規則抗体(抗E)を持つ患者に, 夜間医師が簡易法でクロスマッチを行いMAP-2を2パック輸血. 翌日調査した結果, 輸血した血液のE抗原が陽性であることが判明した. 症例2. 不規則抗体(抗E, 抗c)を持つ患者へ, 夜間医師が交差適合試験を行い, 3パック(MAP-2)輸血した. 翌日, 輸血された血液を検査したところ, 2パックが不適合であった. 【結果】当院では不適合輸血がおおよそ5000回の輸血に1回発生していることが解った. そこで, 早急に不適合輸血時の治療マニュアルが必要と考えこれを作成した. また, これらの症例や過去の事務的ミスの事例から, 今後の対策として血液請求伝票への誤記を防止する. 輸血時に患者取り違えを防止する. 夜間医師の交差適合試験の判定の研修もしくは輸血検査の機械化, さらには24時間体制の実施. などに取り組む必要があると思われた.
ISSN:0546-1448