悪性褐色細胞腫により心尖部血栓を伴ったカテコラミン心筋症の1例

症例は42歳, 女性. 1994年ころより安静時動悸を自覚. 2003年3月, 他院で左乳癌の術前CT検査で左腎上部に10cm大の腫瘤を指摘されたが, 高血圧も呈さず頭痛や心悸亢進の症候も認めなかったため, 乳癌に対する治療のみ継続し経過観察となった. 2004年3月, 運動中に腰部を強打し, 直後に胸部不快感, 動悸, 嘔気が出現し同院受診. 血圧210/130mmHgと重症高血圧を認め, 同院に緊急入院した. 同日の深夜, 胸痛, 背部痛が出現. 心電図上, V2, V3でSTの軽度上昇とCK, GOTの上昇, トロポニンI陽性を認め心筋梗塞が疑われ当院当科へ転院した. 精査の結果, 血漿...

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Published in心臓 Vol. 38; no. 9; pp. 942 - 949
Main Authors 土至田勉, 松山高明, 礒良崇, 川又朋章, 平野雄一, 茅野博行, 上田宏昭, 鈴木洋, 酒井哲郎, 下司映一, 小林洋一, 伴良雄, 片桐敬
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.09.2006
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ISSN0586-4488

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Summary:症例は42歳, 女性. 1994年ころより安静時動悸を自覚. 2003年3月, 他院で左乳癌の術前CT検査で左腎上部に10cm大の腫瘤を指摘されたが, 高血圧も呈さず頭痛や心悸亢進の症候も認めなかったため, 乳癌に対する治療のみ継続し経過観察となった. 2004年3月, 運動中に腰部を強打し, 直後に胸部不快感, 動悸, 嘔気が出現し同院受診. 血圧210/130mmHgと重症高血圧を認め, 同院に緊急入院した. 同日の深夜, 胸痛, 背部痛が出現. 心電図上, V2, V3でSTの軽度上昇とCK, GOTの上昇, トロポニンI陽性を認め心筋梗塞が疑われ当院当科へ転院した. 精査の結果, 血漿ノルアドレナリンや尿中ノルアドレナリン, ノルメタネフリンの著明な上昇と腹部画像所見で左副腎腫瘍を認めたほか, 心臓超音波検査で左心室心尖部のバルーン状拡張を認めたことから, 褐色細胞腫によるカテコラミン心筋症と診断した. その後, 右脳塞栓症を発症. 心臓超音波検査で左心室心尖部に約1cm大の血栓を認めた. 血栓は自然消失したが, 手術目的で他院に転院し, 左副腎摘出術, および肝部分切除術が施行された. 病理組織検査で副腎腫瘍細胞は, 好塩基性の顆粒状胞体をもつ細胞と胞体の明るい細胞が混在して認められたが, 肝臓の組織でも副腎と同様, 好塩基性の顆粒状胞体を有する細胞を索状に認め, 褐色細胞腫の転移と考えられ悪性褐色細胞腫と診断した. 悪性褐色細胞腫による二次性カテコラミン心筋症を発症し, バルーン状拡張を呈した心尖部に血栓が形成され脳塞栓症を発症する経過を追うことができた貴重な1例を経験した.
ISSN:0586-4488