石原論文に対するEditorial Comment -薬剤抵抗性冠攣縮性狭心症の治療

冠攣縮の病因の根源にあるものは血管内皮機能の破綻である. すなわち高血圧や喫煙, 高血糖などの原因により血管内皮細胞が傷害を受けると, 血管内皮細胞から産生されるNOの相対的な不足が生じることにより, 血管平滑筋の弛緩不全が招来され, 血管収縮(vasoconstriction)が発生する. この反応が冠動脈に起こり, 心筋虚血に基づく典型的な胸部症状が出現する病態を冠攣縮性狭心症(coronary spastic angina;CSA)と呼ぶ. 血管内皮細胞は全身の血管に遍く存在していること, また血管内皮細胞を傷害する諸因子は基本的に全身に作用するものであることから, CSAではびまん性に...

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Published in心臓 Vol. 39; no. 9; pp. 823 - 824
Main Author 坂本知浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本心臓財団 15.09.2007
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ISSN0586-4488

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Summary:冠攣縮の病因の根源にあるものは血管内皮機能の破綻である. すなわち高血圧や喫煙, 高血糖などの原因により血管内皮細胞が傷害を受けると, 血管内皮細胞から産生されるNOの相対的な不足が生じることにより, 血管平滑筋の弛緩不全が招来され, 血管収縮(vasoconstriction)が発生する. この反応が冠動脈に起こり, 心筋虚血に基づく典型的な胸部症状が出現する病態を冠攣縮性狭心症(coronary spastic angina;CSA)と呼ぶ. 血管内皮細胞は全身の血管に遍く存在していること, また血管内皮細胞を傷害する諸因子は基本的に全身に作用するものであることから, CSAではびまん性に血管収縮が発生するのが本来の姿である1). また同様の機序から複数の冠動脈に血管収縮を生じる多枝冠動脈攣縮が高率に発生する. 多枝冠動脈攣縮が同時に発生する場合, pulseless electrical activityやVfを生じ突然死の原因となることが知られている. このようにCSAの治療の成否は, QOLの改善のみならず患者の生命予後に直接的に関与している. 欧米人に比し冠攣縮をきたしやすい素因を持つ日本人では, CSA治療は, より重要な位置をしめる.
ISSN:0586-4488