当院における医療従事者のHCV抗体保有率と針刺し事故後のHCV感染

目的 患者と直接接触する機会の多い医療従事者は感染リスクの最も高いグループであり, HBに次いでHCに関する対策も早急に考えなければならない. そこで今回我々は医療従事者におけるHCV抗体の分布およびアクシデントにおける患者のHCV抗体と事故者のHCV抗体の動向について検討したので報告する. 対象・方法 病院検診の対象となった医療従事者970人および昭和60年4月~平成元年3月までの針刺し事故224件中, 患者が特定できた193人と, フォローが確実にできた事故者14人に対してオーソ社HCV Ab ELISAを用いてC.l.値1.0以上を陽性とした. 結果 医療従事者970人中HCV抗体陽性者...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 2; p. 266
Main Authors 岡田壯, 武田聡江, 岸野光司, 小幡隆, 菅野直子, 皆見啓子, 中木陽子, 雨宮洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.03.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:目的 患者と直接接触する機会の多い医療従事者は感染リスクの最も高いグループであり, HBに次いでHCに関する対策も早急に考えなければならない. そこで今回我々は医療従事者におけるHCV抗体の分布およびアクシデントにおける患者のHCV抗体と事故者のHCV抗体の動向について検討したので報告する. 対象・方法 病院検診の対象となった医療従事者970人および昭和60年4月~平成元年3月までの針刺し事故224件中, 患者が特定できた193人と, フォローが確実にできた事故者14人に対してオーソ社HCV Ab ELISAを用いてC.l.値1.0以上を陽性とした. 結果 医療従事者970人中HCV抗体陽性者15人(1.55%). 職種別の内訳は, 看護婦685人中11人(1.60%), 検査技師101人中2人(1.98%), 医師87人中1人(1.15%), 基礎医学関係者21人中1人(4.76%), 以下放射線技師22人, テクニシャン29人, ナースエード3人, ME8人, その他13人の中に陽性者はいなかった. 一方, アクシデントは患者193人中28人(14.5%)が陽性で, その内, 事故者の事故前と事故についてHCV抗体の測定ができたものが14件. 事故の前後ともに陰性が12件, 事故の前後ともに陽性が1件, 事故前が陰性で事故後陽転したものが1件であった. 考察 医療従事者, ことに観血的に患者に直接接触する職種にHCV抗体陽性者が認められた. またアクシデントにおいてもHCV抗体陽性患者の針刺し事故により陽転した事例が認められた. HBのように積極的予防法や事故対策が確立されていない現時点では, その対策を急ぐとともに医療従事者のHCV抗体の動向, およびアクシデント時のフォローを早急に開始する必要性が示唆された.
ISSN:0546-1448