人工膵による血糖管理を行った重症救急患者におけるTFPI(Tissue Factor Pathway Inhibitor)値の検討
〔目的〕重症救急患者や, それに合併することも稀ではない耐糖能低下例では, 凝固線溶障害(凝固亢進)や血管内皮障害(活性化)を伴うことが多く, またそれらの障害と多臓器障害との密接な関連のあることも指摘されている. 一方, TFPIは主に血管内皮から産生され, 血漿中ではリポ蛋白と結合する外因系凝固阻止物質であり, 重症例では増加するとの報告もあるが, その動態は明らかではない. 今回, 耐糖能障害を生じ人工膵による厳密な血糖管理を行った重症救急患者を対象として, TFPI値と, 凝固線溶異常, 血管内皮障害, 及び多臓器障害との関連を検討した. 〔方法〕5例(汎発性腹膜炎4例(内1例が死亡)...
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Published in | 蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 246 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.09.1999
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ISSN | 0288-4348 |
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Summary: | 〔目的〕重症救急患者や, それに合併することも稀ではない耐糖能低下例では, 凝固線溶障害(凝固亢進)や血管内皮障害(活性化)を伴うことが多く, またそれらの障害と多臓器障害との密接な関連のあることも指摘されている. 一方, TFPIは主に血管内皮から産生され, 血漿中ではリポ蛋白と結合する外因系凝固阻止物質であり, 重症例では増加するとの報告もあるが, その動態は明らかではない. 今回, 耐糖能障害を生じ人工膵による厳密な血糖管理を行った重症救急患者を対象として, TFPI値と, 凝固線溶異常, 血管内皮障害, 及び多臓器障害との関連を検討した. 〔方法〕5例(汎発性腹膜炎4例(内1例が死亡), 下肢閉塞性動脈硬化症(壊死)1例)を対象とした. 検討項目は, 1)血漿総TFPI値, 2)凝固線溶パラメータとして(1)厚生省DIC基準・補助診断項目(血小板数(PLT), FDP, フィブリノーゲン, PIC等)とDICスコア, (2)プラスミノーゲン, (3)アンチトロンビンIII, (4)プロテインC及びS活性, (5)tPA-PAI-1complex(tPA-PAI), 3)血管内皮障害パラメータとしてトロンボモジュリン(TM), 4)多臓器障害パラメータとして日本救命医療研究会MOF診断基準より算出したMOFスコア, 5)耐糖能関連パラメータとして(1)1日平均血糖値, (2)グルコースクランプ法から求めた末梢グルコース代謝率(M値), 6)血清脂質(総コレステロール, トリグリセリド, 遊離脂肪酸)濃度とした. 人工膵は日機装社製STG-22である. 〔結果〕1)ICU入室直後のM値の平均値は4.7±2.7(正常値5~10)mg/kg.minと耐糖能低下を認めたが, 1日毎の平均血糖値の平均値は176±45mg/dlで人工膵による血糖管理は良好であった. 2)TFPIは, DICスコア(相関係数r=0.56, n=20, p<0.01(以下同様)), PLT(-0.57, 20, 0.01), tPA-PAI(0.62, 20, 0.005), TM(0.83, 19, 0.005), MOFスコア(0.87, 20, 0.005)と相関していたが, 血清脂質との相関はなかった. 〔考察・結語〕我々は, 高度耐糖能障害例における凝固障害(DIC, tPA-PAI増加, プラスミノーゲン減少等)や血管内皮障害(TM増加)とMOFとの密接な関連を報告してきた. 今回, TFPIとの関連をみたところ, 敗血症を伴う重症救急患者において, TFPIは凝固亢進や血管内皮障害/活性化と共に増加していた. その機序, 重要性に関しては更に検討を要するが, 重症度指標の1つと考えられた. |
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ISSN: | 0288-4348 |