輸血ニアミス事例を教材とした輸血過誤防止対策

「目的」:輸血過誤を防止するためには, 病院内で発生する輸血事故, および輸血ニアミス事例を漏れなく情報収集し, 分析し, 分析データに基づいた対策を立て, その対策を実行する必要がある. その作業は, 重大な輸血事故の抑止につながる. 「方法」:久留米大学病院の「輸血事故およびニアミス報告書」の統一書式を作成し, 1999年6月より, すべての輸血事故および輸血ニアミス事例をその書式で病院長宛に報告することを, 輸血療法委員会で定めた. 報告書は, 病院長経由で, 輸血部門の部長, 当該診療部長, および当該婦長にコピーが回る体制とした. なお, ニアミス報告者にはペナルティーは科されない....

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 212
Main Authors 佐川公矯, 藤川枝理香, 江頭弘一, 相浦佳代子, 小川美津子, 伊藤雄二, 川野洋之, 東谷孝徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2001
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ISSN0546-1448

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Summary:「目的」:輸血過誤を防止するためには, 病院内で発生する輸血事故, および輸血ニアミス事例を漏れなく情報収集し, 分析し, 分析データに基づいた対策を立て, その対策を実行する必要がある. その作業は, 重大な輸血事故の抑止につながる. 「方法」:久留米大学病院の「輸血事故およびニアミス報告書」の統一書式を作成し, 1999年6月より, すべての輸血事故および輸血ニアミス事例をその書式で病院長宛に報告することを, 輸血療法委員会で定めた. 報告書は, 病院長経由で, 輸血部門の部長, 当該診療部長, および当該婦長にコピーが回る体制とした. なお, ニアミス報告者にはペナルティーは科されない. 集まった報告書は, 輸血部門で匿名に編集され, 毎月の輸血療法委員会に報告される. 2000年9月からは, 毎月のニアミス事例がA4版1枚の一覧表に編集し直され, 輸血療法委員会に報告され審議されている. 「結果」:毎月3~5例の輸血ニアミス事例が報告されている. 看護婦からは詳細な報告書が出されるが, 医師からはより簡単な報告書が出される傾向にある. ニアミス事例の中で, 検体の採血ミスの頻度が多いことから, 輸血部門と看護部の共同作業によって, 院内統一の「採血・検体取扱い手順」が作成され利用されるようになった. 2000年の不適合輸血事例は0件であった. 「考察」:報告書の提出が多くなっていることは, 書式が定められたために, 報告書の作成作業がより簡単になったためと, ペナルティーが科されないために心理的抵抗感が少ないためと考えられる. 看護婦からの報告書が詳細に記述されている理由は, 病院長に報告書が出される前に看護婦長および看護部長の査読が入っているためと思われる. それだけ, 看護婦側は輸血過誤を含めた医療過誤対策により真剣に対処していると言える. 輸血ニアミス事例は, 心理的により討論しやすいので, 輸血事故防止のための教材として院内で活用すべきである.
ISSN:0546-1448