非溶血性輸血副作用における抗セルロプラスミン抗体の検出と分析

【目的】非溶血性輸血副作用(Nonhemolytic Transfusion Reactions;NHTRs)は, アナフィラキシー反応や蕁麻疹, 発熱などの症状を特徴とした輸血副作用である. 惹起症例の多くは血漿成分の投与によって発症し, 頻回輸血によって重篤化する傾向が認められている. このようなことから NHTRs では輸血された血漿タンパク質に対する免疫反応が一因であると考えられている. しかし大多数の症例で原因抗原は特定されていないのが現状である. そこで新規抗原タンパク質の探索とその抗原エピトープの特定を目的として, 患者血清中の抗血漿タンパク質抗体の検出を行い, 患者のタンパク質...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 2; p. 255
Main Authors 新井信之, 嶋田英子, 柴雅之, 光永滋樹, 大里則子, 熊川寿郎, 篠田友孝, 田所憲治, 十字猛夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1998
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】非溶血性輸血副作用(Nonhemolytic Transfusion Reactions;NHTRs)は, アナフィラキシー反応や蕁麻疹, 発熱などの症状を特徴とした輸血副作用である. 惹起症例の多くは血漿成分の投与によって発症し, 頻回輸血によって重篤化する傾向が認められている. このようなことから NHTRs では輸血された血漿タンパク質に対する免疫反応が一因であると考えられている. しかし大多数の症例で原因抗原は特定されていないのが現状である. そこで新規抗原タンパク質の探索とその抗原エピトープの特定を目的として, 患者血清中の抗血漿タンパク質抗体の検出を行い, 患者のタンパク質の分析を行った. 【方法】惹起抗体の検出のための抗原として IgG 除去プール健常人血漿を Native 二次元電気泳動で分離した. これを膜転写後, 膜上のタンパク質と患者血清を反応させ, 二次抗体による酵素標識で抗体を検出した. 対応する抗原タンパク質はプロテインマップ上での比較と精製抗原に対する特異性で同定した. またアミノ酸配列の違いを検討するために抗原タンパク質のDNAシーケンスを行った. 【結果・考察】1例で抗血漿タンパク質抗体が検出され, その検出位置から抗セルロプラスミン抗体であることが確認された. 抗セルロプラスミン抗体は精製セルロプラスミンを抗原としたEIAにより新たに106症例中2例で検出された. これらは同様に二次元電気泳動とELISA, 及び吸収実験からも同定された. 3例共に血中総セルロプラスミン濃度は正常範囲であった. また患者1例のセルロプラスミンのDNAシーケンスでは, 少なくともそのエクソン内には健常人の配列と差異はみられなかった. 現在, さらにタンパク質修飾などによる抗原性や自己抗体である可能性について検討中である.
ISSN:0546-1448